研究課題/領域番号 |
17K07218
|
研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
藏滿 保宏 北海道医療大学, その他, 教授 (50281811)
|
研究分担者 |
北川 孝雄 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教(特命) (20614928)
吉野 茂文 山口大学, 医学部附属病院, 准教授 (60294633)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | GLO1 / 癌の悪性化 / プログレッション / 膵癌 / オルガノイド |
研究実績の概要 |
浸潤性膵管癌の5年生存率は1-4%と非常に予後不良であり、発見時に手術不能症例が大多数を占める。その理由のひとつとして膵癌の高転移能、高浸潤能が挙げられる。そこで、膵癌の高転移能、高浸潤能に関与する蛋白質同定を目的として膵癌組織のプロテオーム解析を行ったところ、膵癌組織中のGlyoxalase I (GLO1)が周辺の非癌部組織と比較して有意に高発現していることが明らかとなった。GLO1は解糖系の中間代謝産物methylglyoxal を乳酸に分解して解毒する酵素である。これまでの数年間の癌組織と癌細胞のプロテオーム解析の研究から、膵癌組織でのGLO1の高発現、腎細胞癌の高転移クローンでのGLO1の高発現、また慢性炎症誘発の実験的マウスの線維肉腫悪性化進展モデルでのGLO1の高発現を明らかにしてきた。また、GLO1が癌細胞の動きを促進していること、核内に移行して機能していることを明らかにしてきている。本研究では蛋白質レベルでGLO1の核移行の機序を明らかにし、さらに核内でどのような蛋白質と相互作用をしているかの検討を試み、阻害による転移抑制を検討することが目的である。(1)ChIP-Seq法によるGLO1結合DNA断片の同定を試みた。(2)GLO1のCo-IPによる核内蛋白質の同定をQRsP11細胞からNE-PER Nuclear and Cytoplasmic Extraction Reagentsを用いて核内蛋白質を抽出しDynabeads Co-Immunoprecipitation Kit (Novex)と抗GLO1抗体によるCo-IPを試みた。(3)膵癌組織からのオルガノイド樹立と培養を試みた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2017年4月から山口大学医学系研究科から北海道医療大学がん予防研究所に転勤になった。がん予防研究所の専任研究員は申請者ひとりであり、機器、実験室等の環境が整っておらず基本的な研究の遅れが目立っている。しかしながら、就任1年が経過して来ておりようやく実験ができる環境が整って来つつある。(1)ChIP-Seq法によるGLO1結合DNA断片の同定は、実験環境がかなり異なり当該年度は全く進められなかった。(2)GLO1のCo-IPによる核内蛋白質の同定を試みたが、明らかな共沈と思われるバンドを検出する事ができず、同定に至っていない。(3)膵癌組織からのオルガノイド樹立と培養は申請者本人は医学部附属病院が併設していた山口大学を退職したことで膵癌組織の入手が困難となったため断念したが、分担研究者が引き続きオルガノイドの樹立を試みている。しかしながら、未だ樹立に成功していない。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)とにかくGLO1のco-IPを成功させて、核内でGLO1と結合して機能していることが予想される蛋白質を同定して、GLO1のプログレッションした癌細胞での役割を明らかにすることが一番である。そのために、まずGLO1を安定的に強発現させたトランスフェクタントを樹立してGLO1のco-IPを成功させる。 (2)膵癌のオルガノイド樹立は申請者からの手を離れて研究分担者に頼ることになるが、ノウハウがあるので、山口大に出向いて何度か共同で実験を行う。 (3)ChIP-seqは北海道医療大学の研究環境的に施行困難なため共同研究や受託でなんとか進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2017年4月から山口大学医学系研究科から北海道医療大学がん予防研究所に異動したが、施設、設備、機器、人員などかなりの研究環境の悪さのため、この1年間は研究環境整備に追われて実験が進まなかったため、次年度に回した。
|