研究実績の概要 |
パルミトイルピペリジノピペリジン(PPI)は天然物をリードとして、私たちの研究グループが独自に開発した新規抗がん物質である(特許第5597427号, 2014年登録)。インシリコ・コンピュータ解析において、PPIは転写因子STAT3の2量体形成を阻害することで転写活性を抑制することを示した。リポーター遺伝子を用いた解析では、PPIは実際にSTAT3転写活性を抑制することを私たちは見いだした。さらに、PPIはSTAT3を標的分子として、(1)ヒト大腸がん細胞に対する高い腫瘍選択性、(2)STAT3リン酸化抑制、(3)アポトーシス誘導(細胞レベルと個体レベルでの検証)、(4)血管新生抑制、(5)移植腫瘍の縮小、(5)大腸発がんプロモーション抑制(個体レベルでの検証)などの効果を発揮することが証明された(Ando et al. Int J Oncol 58: 251-265, 2021)。科研費H29~R2では腫瘍選択性に必須の構造(ファルマコフォア)をつきとめた。さらに、腫瘍選択性には、N(窒素)原子がもつプロトンをひきつける特性(求核性)が重要な役割を担っていることを突き止め、PPIのピペリジン構造を開環する(求核性を上げる)ことで腫瘍選択性と抗がん効果がPPIより高いプロトタイプ化合物(プロトA)の開発に成功した(特許第6532730号, 2019年登録)。プロトAの設計思想の正しさを検証するために、抗がん効果、標的分子、作用機序について検討した。ヒト大腸がん細胞に対する増殖抑制効果および腫瘍選択性、STAT3に対する親和性(インシリコ解析)、細胞レベルでのSTAT3転写および発現抑制、血管新生抑制(CAMアッセイ)などの効果を発揮することを私たちは見いだした。プロトA: N, N-bis(3-(dimethylamino)propyl)hexadecanamide)
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