慢性骨髄性白血病(CML: chronic myeloid leukemia)は、多能性造血幹細胞の異常によって発症する、骨髄増殖性腫瘍である。90%以上の症例に9番と22番染色体の相互転座t(9; 22)である、フィラデルフィア染色体(Ph)が認められる。BCR-ABL1遺伝子にコードされる、BCR-ABLチロシンキナーゼタンパクにより、細胞増殖、アポトーシスの抑制があり、Ph陽性細胞が無秩序に増殖する。Ph陽性白血病の予後は、ABL阻害薬の登場により劇的に改善した。しかし、分子遺伝学的完全寛解に入った症例でも、ABL阻害薬の中止により、再発する症例が多数存在する。この原因として、ABL阻害薬に耐性の白血病幹細胞が骨髄内で残存し、ABL阻害薬治療中止後、白血病細胞を供給することがその原因と考えられている。 よって残された課題は、骨髄に残存する、白血病幹細胞をいかに制御して、新たな治療法を確立することである。グルタミン酸は、中枢神経系の主要な神経伝達物質である。他のがん細胞などで、グルタミン酸の受容体の発現の亢進、受容体のサブユニットを形成する分子に変異がみられることが報告されている。本研究では、Ph陽性白血病由来iPS細胞を作成した。このiPS細胞は正常細胞と比較して、グルタミン酸受容体の発現が著明に亢進していることを確認した。またABL阻害薬(イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、ポナチニブ)の耐性細胞を樹立しており、個々の耐性細胞に対して、マイクロアレイによる解析を行った。
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