がんペプチドワクチンに主に使用されているフロイト不完全アジュバントは、ワクチン投与部位に長期残留することやそれに伴う炎症反応が長期投与患者において大きな負担になっていた。本研究では、マウスモデルを使用して、フロイト不完全アジュバントを用いずに、投与局所において刺激性の低い患者にやさしいケミカルピーリング経皮がんペプチドワクチン開発とともに経皮免疫法に適したアジュバントの開発を目指して、企画した。 乳酸を用いたケミカルピーリングにより、抗原ペプチド(OVA257-254)が抗原特異的なT細胞受容体を発現するOT-I細胞を刺激し、増殖を促進することをin vivoで確認した。この抗原特異的反応を増強するためにアジュバントとしてイミキモドクリームを使用した。その効果を混合ワクチン(ペプチド+イミキモドクリーム)、もしくはイミキモドクリームを別にペプチドワクチンの前もしくは後に処置したもので比較したところ、ケミカルピーリング、ペプチドワクチン、イミキモドクリーム(2時間塗布)の順に処置した場合、抗原特異的T細胞の増殖が飛躍的に高められることがCFSE増殖アッセイで、抗原特異的細胞傷害性T細胞の誘導がインターフェロンガンマエリスポットアッセイで確認された。さらに、ペプチドワクチンにHMGB1阻害剤(グリチルリチン)を加えた混合ワクチンを投与した場合、ペプチドのみのワクチンに比べ、抗原特異的T細胞の増殖増強効果が見られたが、抗原特異的細胞傷害性T細胞の誘導における増強効果はアジュバントの増強効果に比べHMGB1阻害剤の効果は低い傾向にあった。以上より、経皮吸収型であるケミカルピーリング経皮がんペプチドワクチンは抗原ペプチド特異的細胞傷害性T細胞誘導が可能であることが示され、フロイト不完全アジュバントを用いない患者にやさしい経皮免疫療法の可能性を示唆している。
|