研究課題/領域番号 |
17K07231
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研究機関 | 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
伊藤 しげみ 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), がん薬物療法研究部, 特任研究員 (80600006)
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研究分担者 |
田沼 延公 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), がん薬物療法研究部, 主任研究員 (40333645)
佐藤 郁郎 地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所), ティッシュバンクセンター, 部長 (50225918)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Pkm1 / Pkm2 / Pkm / 代謝 / 小細胞肺がん |
研究実績の概要 |
他の大半のがんとは異なり、SCLCを典型とする肺神経内分泌腫瘍(肺NET)は、アンチワールブルグ効果型の解糖系酵素Pkm1を発現する腫瘍である。SCLC増殖における強いPkm1アディクションもみとめられている。これら知見をふまえ、Pkm1とその下流因子を新規治療標的として開発することを目的として研究を行った。具体的には、Pkm1によって活性化されるNAD合成代謝経路の阻害に対する小細胞肺がんの感受性を調べた。また、臨床検体における関連遺伝子の発現を調べた。 従来、NAD合成阻害剤としては、FK866が最も使用されてきたが、この薬剤は、in vivo実験では然したる抗腫瘍効果を示さない結果を昨年度に得ていた。一方で、新規NAD合成阻害剤TLM-Xは、動物モデルにおいても明らかな治療効果を発揮した。このような動物実験における成績の差異を説明するため、SCLC株移植担がんマウスモデルを用いてPK/PD解析を行った。その結果、FK866とTLM-Xとの間に、血中クリアランスに著しい違いがあることが分かった。端的には、FK866は、投薬後きわめて速やかに血中濃度が上昇するものの、その後3時間程度で有効濃度を下回るまでレベルが低下する。一方、TLM-Xの血中濃度は、投薬後ややゆるかに上昇して、その後比較的長い期間、十分なレベルで保たれることが分かった。FK866投薬後の著しく速い血中濃度の上昇は、食事療法との併用時における急性毒性の原因となることも示唆された。これら結果から、FK866の用途は、培養系のみに限るべきと結論した。一方で、市場から調達可能な、FK866以外の代謝阻害剤についても検討を行った。複数の化合物をテストしたなかから、化合物Bが、TLM-Xに次ぐ治療効果を示すことが分かった。
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