バフンウニの複数の初期型ヒストン遺伝子座が発現の活発な桑実胚期に集積することを見出していた。この遺伝子座の動態をライブイメージングにより解析するために、ゲノム編集ツールのCRISPR-Cas9系を用いたシステムの確立を試みていたが、これまで初期型ヒストン遺伝子座やテロメアを示す特異的なスポットは検出されなかった。そこで、改めてCRISPR-Cas9の構築そのものについて、不活性型dCas9の作製から再検討することにした。 ウニ胚における色素合成に関するポリケチド合成酵素PKS1をコードする遺伝子を標的とし、CRISPR-Cas9システム自体の再検討を行った。PKS1遺伝子座を標的とする3つのsgRNAを合成し、150 ng/uLのsgRNAと750 ng/uLのCas9 mRNAをウニ胚に導入したところ、高効率の変異導入が観察された。3つのsgRNAのうち、sgRNA#1を使ったときは変異導入が確認できなかったが、sgRNA#2では100%の変異導入効率、sgRNA3でも80%の変異導入効率が得られた。以上より、効率の良いsgRNAを選抜することが重要であると示唆された。また、sgRNA#2の解析より、Cas9 mRNAの濃度を100 ng/uLまで減少させても効率の良い編集効率が得られることも確認できた。 また本実験において、長期的な観察を可能とするために、ゲノム編集されたノックアウト胚を長期に培養し、研究室内の飼育環境でウニ胚を変態まで維持し、さらに変態後のノックアウト個体を1年以上飼育することにも成功した。そこで本研究成果を、Development Growth and Differentiation誌にて発表した。
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