研究課題
MIBP1(HIVEP2)遺伝子はZincフィンガーを持つ約270kDaの転写因子をコードしている。ある種の先天性知的障害はHIVEP2遺伝子変異を原因とすることから、同遺伝子は脳機能の成熟に関わっていると考えられる。本研究計画でも、神経芽細胞腫由来SH-SY5Y細胞におけるMIBP1の発現が神経分化誘導剤であるレチノイン酸処理により上昇することを見出した。MIBP1タンパク質が結合するDNA配列として、NF-κB応答配列をはじめ複数の配列報告されている。ヒトゲノム全体でどのような領域に結合し、遺伝子の発現制御を行っているのか明らかにするために、ゲノム編集によりMIBP1タンパク質のC末端にFLAGタグを挿入し、抗FLAG抗体を用いてその機能解析を行った。大腸がん由来HCT116細胞から得られたクローン(M15細胞)でFLAGタグが付加された全長MIBP1タンパク質を抗FLAG抗体で検出することができた。これによりMIBP1タンパク質が核と細胞質に局在すること、またその発現がTNF-α処理により上昇することが判明した。しかし、M15細胞でクロマチン免疫沈降を行ったが既知の結合配列への結合は検出されず、同細胞でのMIBP1タンパク質の発現レベルが低いためではないかと考えた。本年度は、MIBP1遺伝子の発現が高く、また神経系の細胞の性質を持つとされるHEK293細胞のゲノム編集を行い、複数のクローンを得た。これらのクローンを用いてMIBP1タンパク質が結合する配列の解析を行っている。ゲノム編集が遺伝子発現に及ぼす影響として、M15細胞で3'-非翻訳配列(UTR)に外来配列が挿入されることにより、MIBP1 mRNAの分解が抑制されることも見出した。MIBP1 mRNAは半減期が短いmRNAであるが、その分解の制御に3'-UTRが重要な役割をはたしていることが示唆された。
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Biological and Pharmaceutical Bulletin
巻: 45 ページ: 1385~1388
10.1248/bpb.b22-00132