研究課題/領域番号 |
17K07246
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
友田 紀一郎 大阪医科大学, 医学部, 講師 (50362843)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | X染色体 / X不活性化 / X再活性化 / ヒト人工多能性幹細胞 / 分化 / XaXa / 全能性 / 胚性ゲノム活性化 |
研究実績の概要 |
本申請の目的は、二本のX染色体 が転写的に活性化している(XaXa)女性ドナー由来ヒト人工多能性幹細胞 (hiPS 細胞)を再現性よく作製する技術を確立し、ヒトにおけるX 染色体制御機構を解明する基礎を構築することにある。これまでの研究から、hiPS細胞の培養条件を最適化することで再現性良くXaXaであるような(XaXa-like) hiPS細胞を複数樹立することに成功した。そこで、これらのXaXa-like hiPS細胞がXaXaであることを立証する為に、1)X関連遺伝子の RNA-FISHによる転写直後の転写産物検出、2)RNA-seqによる発現量およびSNP発現解析、そして3) ATAC-seqによるX染色体クロマチン構造の解析、を行った。その結果、XaXaであると思われたhiPS細胞が一本のX染色体のみが転写活性化しているXaXiである可能性が強まった。 XaXaは、受精卵が数回の卵割後に形成する胚盤胞(blastocyst)の内部細胞塊中に存在する多能性細胞の特徴である。XaXa-likeなhiPS細胞を誘導する培養条件を再検証する為に、マウス多能性幹細胞を用いて解析を行ったところ、その培養条件が2細胞期で見られる遺伝子発現を活性化することを明らかにした。マウスにおける2細胞期の遺伝子発現は、受精直後の胚性ゲノム活性化 (zygotic genome activation, ZGA)として位置づけられ、細胞の全能性と関連がある。全能性は、多能性が体を形成するすべての細胞に分化する能力を表すのに対して、それに加えて胎盤などの胚体外組織をも形成する能力を示す。2細胞期で見られる遺伝子発現が活性化している細胞群をさらに培養したところ、胚盤胞のような形態と遺伝子発現をもつ構造を自発的に形成することを明らかにした。 また、本研究に関連して国際学会で招待講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は概ね計画通りに行っているが、結果は当初の予想と異なっていた。この為、当初の予定を変更して、XaXaを誘導する為の培養条件を再検討した。その結果、予想外の現象を観察し、その現象を明らかにする為の実験を重ね、全能性に関連した遺伝子発現が誘導されていることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
マウス多能性幹細胞を用いた解析で、自発的に形成された、遺伝子発現や形態が胚盤胞に類似した構造物の解析をさらに進める 。また、同様の培養条件がヒト多能性幹細胞中でも2細胞期に見られる遺伝子群の発現を誘導する可能性がある。そこでヒトの2細胞期、あるいはZGA、をモニターする為のレポータシステムを開発し、そのレポーターをもとに培養条件の最適化を行う。この最適化によりXaXa hiPS細胞が樹立できれば当初予定した実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
3年計画の2年目終了時の為。 次年度は最終年度であることから、昨年度同様にhiPS細胞の培養や解析の為の試薬等の購入に用いる。
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