東京大学で開始されたがんゲノム個別化医療を目的とした「ゲノム医療研究プロジェクト」において、467種類の遺伝子の点突然変異・挿入欠失・コピー数異常、476種類の遺伝子融合を調べる東大オンコパネルを使用し、次世代シークエンサーで解読したRNAデータから遺伝子融合とエクソンスキッピングを解析するパイプラインを開発した。本パイプラインは、上記のプロジェクトに実装されている。融合点を含むリードの検出を目的としたアルゴリズムで、抗がん剤の存在する融合遺伝子に対しては仮想配列を事前に作成して確実に探索し、それ以外については、トランスクリプトームをリファレンスにして融合遺伝子ペアもしくはスキッピングしているエクソンを予測し、ダイナミックに仮想配列を作成して検出するものである。1リードからの検出感度を有するが、発がんに寄与しないものや擬陽性、更には試料汚染による検出のフィルタリング方法は今後も検討する必要がある。解析事例は、主に肺がんと肉腫症例で、臨床現場における前向き検体およびアーカイブ検体180例以上を解析した。病理診断時には原因を特定できなかった検体から疾患原因融合遺伝子が検出することができ、肉腫では新規の遺伝子融合が数多く検出され、診断のための有益な情報提供ができると共に、疾患の原因究明に向けた糸口になるような結果を得ることができた。現在はRNAパネルから発現量解析を可能にするプログラムの実装とパネルのバージョンアップに合わせたパイプラインのアップグレードを検討中である。
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