研究課題
がん原因遺伝子を標的とした抗がん剤・分子標的治療が開発され、遺伝子レベルで患者一人ひとりに最適な治療薬を選択する個別化医療の時代が到来した。しかし、ゲノム医療を受けるには、標準治療が終了した場合など制約がある。その制約の中には、同種造血幹細胞移植歴もしくは臓器移植歴を有する患者は検査を推奨されない、という項目があるが、これは体細胞変異検出とその評価が難しいという検査側の事情であると鑑みられる。移植歴患者であってもゲノム医療を受けれるような解析方法をバイオインフォマティクスの立場から試みる。急性骨髄性白血病のため同種造血幹細胞移植を行い、その後大腸がん(二次がん)を患った患者検体(大腸がん腫瘍部とその周辺正常部)と移植したドナー検体について、まずは移植後検体においてドナー検体の混入率推定を行った。ドナー検体の混入率推定が可能になると、移植後に発生した疾患の起源を推測するのに役立つ。「レシピエント検体でアレル頻度0~5%、ドナー検体でアレル頻度95~100%の1000人ゲノムSNP箇所」を抽出し、それらの箇所において移植後二次がん検体(正常部・腫瘍部)のアレル頻度を求めその平均により算出した。すると、例えば一つの検体で行ったアレル頻度のヒストグラムでは、移植後二次がん腫瘍部検体で14.8%、正常部で29.1%の割合でドナーの混入が推測された。このようなドナー混入率の観点からスクリーニングを行うと、ドナー混入率は10~40%ほどの検体が多いが、中には混入率が著しく異なる例が見られた(腫瘍部:67.0%、正常部:21.8%)。そのような検体においては「ドナー由来のクローンによるものなのか」、「採取した検体のリンパ球の割合の差なのか」を注意深く検討し、疾患原因となる変異検出を目指す。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件)
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