研究実績の概要 |
GWAS[1]で使用された全てのSNVのP値、染色体上の位置情報、オッズ比のファイルを作成する。MATLAB(R2018a)をプラットフォームとするコンピューティング言語でプログラムされたMAGENTAにより解析したところ、CTCF経路とmTOR経路が同定された。CTCF経路とmTOR経路の関与を確認するために、本学心臓外科で採取した既存試料(僧帽弁膜症症例)11検体を用いて、Microarray解析を実施した。心房細動患者と非心房細動患者で2つの経路の関与を調べたところ、心房細動患者から採取された心房筋においてはmTOR経路が抑制されていることが示された[2]。 次に同定されたユビキチン・リガーゼNEURLのmTOR経路への作用を調べるために、mTORC1複合体に含まれる分子およびmTORC2に含まれる分子のタンパク・リン酸化レベルの変化を調べた。HL-1細胞をsiNEURL, siCtrlでノックダウン処理をして、PRAS40を調べたところ、いずれも遺伝子発現抑制は認められなかった。そこで、再度LC-MS/MS分析を実施したところ、BAG6, PRKAR1Aが同定された。siNEURL, siCtrlで比較したところ、遺伝子発現に有意差を認めた。また、既報でCPEBファミリーの発現レベルへの影響について調べたところ、CPEB2およびCPEB4で有意差を認めたが、最終的な関与は否定された。 [1]Sinner, Ebana, Furukawa, Ellinor et al. Circulation (2014) 130 15:1225-35 [2]Ebana, Sun. Internationa Journal of Cardiology: Heart and Vasculature (2019) 4;24:100383
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的はGWASから同定されたCTCF経路とmTOR経路の心房細動発症との関与を確認するために、本学心臓外科で採取した既存試料(僧帽弁膜症症例)11検体を用いて、Microarray解析を実施した。バイオインフォマティクス解析から心房細動患者と非心房細動患者で2つの経路の関与を調べたところ、心房細動患者から採取された心房筋においてはmTOR経路が抑制されていることが示された。 次に同定されたユビキチン・リガーゼNEURLのmTOR経路への作用を調べるために、文献レベルで検索を行い、mTORC1複合体に含まれる分子およびmTORC2に含まれる分子のタンパク・リン酸化レベルの変化を調べた。HL-1細胞をsiNEURL, siCtrlでノックダウン処理をして、PRAS40を調べたところ、いずれも遺伝子発現抑制は認められなかった。そこで、再度LC-MS/MS分析を実施したところ、BAG6, PRKAR1Aが同定された。siNEURL, siCtrlで比較したところ、遺伝子発現に有意差を認めた。また、既報でCPEBファミリーの発現レベルへの影響について調べたところ、CPEB2およびCPEB4で有意差を認めたが、最終的な関与は否定された。 現時点では、NEURLとmTORには機能的な相関があるということは判明しているが、その機序は依然不明なままである。現在はNEURLのノックダウンによってHL-1細胞の構造異常を認めたため、その機能解析を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
次に同定されたユビキチン・リガーゼNEURLのmTOR経路への作用を調べるために、文献レベルで検索を行い、mTORC1複合体に含まれる分子およびmTORC2に含まれる分子のタンパク・リン酸化レベルの変化を調べた。HL-1細胞をsiNEURL, siCtrlでノックダウン処理をして、PRAS40を調べたところ、いずれも遺伝子発現抑制は認められなかった。そこで、再度LC-MS/MS分析を実施したところ、BAG6, PRKAR1Aが同定された。siNEURL, siCtrlで比較したところ、遺伝子発現に有意差を認めた。また、既報でCPEBファミリーの発現レベルへの影響について調べたところ、CPEB2およびCPEB4で有意差を認めたが、最終的な関与は否定された。 現時点では、NEURLとmTORには機能的な相関があるということは判明しているが、その機序は依然不明なままである。現在はNEURLのノックダウンによってHL-1細胞の構造異常を認めたため、その機能解析を進めている。より具体的には、アクチンの分解が認められたため、ユビキチン機構とアクチン分解機構について解析を進めることが考えられる。ユビキチン機構の中のシャペロンたんぱく質のアクチン分解関与は心房細動発症モデル動物でも示されており、可能性の高い候補分子であると考えている。また細胞の表現型について、細胞質に見られた空胞形成について電子顕微鏡で形態解析をすることで解明の一助になると考えられた。
|