研究課題/領域番号 |
17K07254
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山田 亮 京都大学, 医学研究科, 教授 (50301106)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | オミックス / 解析手法 / ベイズ / MCMC / ゲノム |
研究実績の概要 |
申請者の過去の研究フィールドを中心に、複数のデータセットをベイズ手法により統合解析することに適当な例を文献検索した結果、複数の例が同定されたが、(1) SNPジェノタイプ・トランスクリプトームデータ・個体量的表現型の組み合わせと、(2) SNPジェノタイプ・エピゲノム・トランスクリプトームの組み合わせとが、プロトタイプ検討対象として適切であろうと考えられた。(1)に関して、複数の確率モデルを設定し、シミュレーションデータ生成のプログラムを実装した。また、それを用いて、同プログラムを用いた、確率モデルのパラメタをMCMCベイズ法による事後分布によって推定するプログラムを作成し、方法のフィージビリティ評価を進めた。シミュレーションデータ作成とMCMCベイズ法との両方のプログラム実装を進めるにあたり、いくつかの技術的課題が確認されたので、それに関する情報収集を進め、適宜、改良を行った。以上を平成29年度の上半期を中心に行い、平成30年度も引き続き、チューニングを進めた。(2)については、平成30年に入ってから中心的に取り組んだ。このプロトタイプでは、非負値行列因子分解法(NMF)を応用する形で取り組んだ。NMFは通常、2つの行列型データセットに対して行うものであるが、昨今のオミックス解析では、同一のサンプルセットに対して、3つの異なるオミックスデータを取り、その3オミックス層に潜むクラスタ構造を推定する試みがなされている。方法について検討を開始し、計算量の問題などに課題はあるものの、原理的には有望なアプローチであるとの予備的結果を得た。 われわれの構想とほぼ同じ枠組みの論文発表がなされた。これを受け、考え方の方向は悪くはなかったが、研究の新規性について、再検討を要する事態となり、より一般性を持たせたモデル対象の検討のための情報収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、申請者と申請者が主宰する大学院研究室メンバー2名とで遂行する計画である。1名が休学・もう1名が卒業となった。担当者として博士研究員の参加を得ることとした。人員移動に伴う引継ぎに手間取ることはあったが、幸い、当初予定通りの進行となった。全体として順調な進捗となっている。外国研究チームから良く似た手法の論文発表があったため、「複数のオミックスデータセット」「一部サンプルが複数オミックス測定に共有されている」という研究テーマの基本の枠を維持した上で、その重なりパターンを比較的複雑にした場合のベイズモデルへの組みなおしを計画し、それに伴う計算量の増大が解析パフォーマンスにどのような影響をもたらすかについての検討を、研究テーマの新規性として前面に出すこととし、MCMCベイズ解析上の重要な新知見を得る方向で統計モデルの特性検討を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度後半に検討を開始したNMFを用いた多層オミックスの統合解析は非常に有用な印象が得られており、その詳細検討を本格的に進めた。類似研究の発表があり、手法の新規性は減じたが、われわれが実装したプログラムを用いてパフォーマンスを評価した成果は、学会発表に結びつけた。重なりパターンを比較的複雑にした場合のベイズモデルへの組みなおしを計画し、それに伴う計算量の増大が解析パフォーマンスにどのような影響をもたらすかについての検討を、研究テーマの新規性として前面に出すこととし、MCMCベイズ解析上の重要な新知見を得る方向で統計モデルの特性検討を進め、プロジェクト最終年度として、ゲノム・オミックス領域でのベイズ・インテグレーション解析の知見の蓄積を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度(最終年度)は成果発表関連費用が見込まれるため、ある程度の残額を確保した。
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