研究課題/領域番号 |
17K07257
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
佐藤 哲也 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (00457425)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ゲノム創薬 / メディカルインフォマティクス / バイオインフォマティクス / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
抗体医薬は、近年のブロックバスター(画期的な薬効と莫大な利益をもたらす新薬)の上位半分以上を占めており、その重要度は年々増している。しかしながら、抗体医薬の標的分子は多様性(レパートリー)が少なく、新たな標的候補の発見が期待されている。そこで本研究では、がん患者の臨床データを利用して、抗体医薬の標的となる細胞表面分子を発見するための新規手法を開発する。本手法は、RNAスプライシングパターンに基づき、これまで遺伝子発現差解析から除外されていた遺伝子群に注目することにより、全く新しい標的分子を見つけ出せる可能性がある。その結果として新たな診断薬や治療薬の開発につながることが期待される。 本年度の研究では、臨床サンプルデータを使って、実際にがん患者の生体内で起こっているRNAスプライシングバリアントを見つけ出した。The Cancer Genome Atlas (TCGA) データベースで公開されている10,000症例以上のRNA-Seqデータを対象にして、各種のがんに対応するスプライシングパターンを検出した。TCGAから配列データを入手し、非がん部サンプルでは検出されないが、がん部サンプルでは検出されるスプライシングバリアントを同定した。結果として、発現差が乏しいためにこれまで注目されなかった遺伝子のスプライシグバリアントを標的とすることにより、がんに関連する全く新しい遺伝子のスプライシングパターンを見つけ出すことに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究では、がん患者で特異的に見られるRNAスプライシングバリアントを同定するために、TCGAデータベースから配列データの入手及び再マッピングを行って発現量の計算を行った。TCGAに登録されているデータの中から、がん部と非がん部のペアでデータが揃っている臨床サンプルに注目して、遺伝子レベルの発現量に加えてエクソンレベルの発現量についても同時に計算した。まず、遺伝子レベルのデータから、がん部と非がん部の比較で発現差がなかった(統計的有意性を示さなかった)遺伝子を抽出した。その後、抽出した遺伝子のエクソンごとの発現量に注目し、今度はがん部と非がん部の比較で発現差が認められた(統計的有意性を示した)エクソンを同定した。その結果、甲状腺癌や肝臓肝細胞癌など15種類の癌種を対象とすることができ、最終的に約3万6千個のエクソンを同定した。これまで発現差が乏しいためにこれまで注目されなかった遺伝子のスプライシグバリアントを標的とすることにより、がんに関連する全く新しい遺伝子のスプライシングパターンを見つけ出すことに成功したことから、本年度の計画内容を達成し「概ね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に同定された遺伝子とスプライシングエクソンに注目して、細胞表面分子として機能する可能性について調査する。具体的な作業としては、抽出された遺伝子のアノテーション情報と照らし合わせて、遺伝子の機能分類を行い、細胞表面分子を絞り込むことで新たな分子標的を探索する。さらに、スプライシングエクソンから翻訳されるペプチド断片に注目して、ドメインレベルの機能を有するかをその断片とタンパク質立体構造データと比較、検討する。そして、スプライシングエクソンの翻訳部分がタンパク質表面に位置しているか、タンパク質間相互作用のインターフェースを構成しているか、低分子の結合や触媒活性部位と密接に関係しているか等、抗体医薬の新規候補となり得るかを議論する。最終的に、本研究で得られた結果をとりまとめ、成果の発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度配分額のうちおよそ55千円が次年度繰越となった。その理由は、学会での成果発表を延期したためである。次年度は、この繰越金を加えた額で、次世代シーケンサーによる配列決定用試薬の購入や研究打ち合わせのための旅費に使用する計画である。
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