抗体医薬は、近年のブロックバスター(画期的な薬効と莫大な利益をもたらす新薬)の上位半分以上を占めており、その重要度は年々増している。しかしながら、抗体医薬の標的分子は多様性(レパートリー)が少なく、新たな標的候補の発見が期待されている。そこで本研究では、がん患者の臨床データを利用して、抗体医薬の標的となる細胞表面分子を発見するための新規手法を開発する。本手法は、RNAスプライシングパターンに基づき、これまで遺伝子発現差解析から除外されていた遺伝子群に注目することにより、全く新しい標的分子を見つけ出せる可能性がある。その結果として新たな診断薬や治療薬の開発につながることが期待される。 最終年度では、これまでに同定された遺伝子とスプライシングエクソンに注目して、細胞表面分子として機能する可能性について調査した。具体的な作業としては、抽出された遺伝子のアノテーション情報から機能分類を行い、細胞表面分子として記述されている遺伝子に絞り込むことで新たな分子標的を探索した。さらに、スプライシングエクソンから翻訳されるペプチド断片に注目して、ドメインレベルの機能を有するかをその断片とタンパク質立体構造データと比較、検討した。そして、スプライシングエクソンの翻訳部分がタンパク質表面に位置しているか、タンパク質間相互作用のインターフェースを構成しているか、低分子の結合や触媒活性部位と密接に関係しているか等、抗体医薬の新規候補となり得るかを議論した。最終的に、全く新しい標的分子の候補として4個の遺伝子を見出だすことに成功した。本研究の成果は新薬開発につながることが期待される。
|