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2018 年度 実施状況報告書

原因遺伝子不明のmonogenic diabetesの網羅的解析

研究課題

研究課題/領域番号 17K07258
研究機関東京女子医科大学

研究代表者

岩崎 直子  東京女子医科大学, 医学部, 教授 (70203370)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードMODY / monogenic diabetes / targeted sequencing / 個別化医療 / 若年発症糖尿病 / 次世代シーケンサー
研究実績の概要

【背景と目的】 Maturity onset diabetes of the young (MODY) は1種類の遺伝子の異常によって発症する糖尿病で原因遺伝子は14種類である。次世代シーケンサーを用いて14種類のMODY遺伝子の網羅的スクリーニングを行う事を目的とした。
【対象と方法】対象は30歳以下で糖尿病と診断され、GAD抗体陰性、BMI≦30の48症例である。糖尿病家族歴は問わなかった。 HaloPlex Target Enrichment System を用いてMODY14遺伝子のコーディング領域をカバーするプライマーセットを作成し、Illumina MiSeq system v3 (Illumina, San Diego, CA) で解析した。塩基配列はGRCh37を対照としてANNOVERによって抽出し、1000 genome、ClinVer、ExAcでフィルタリングの後、SIFT、PoluPhen-2、CADDなどのアルゴリズムによる変異の機能予測を行った。本研究は本学ゲノム解析研究に関する倫理審査委員会の承認を得て実施された。
【結果】 48例の糖尿病診断時年齢は16.5歳、BMIは21.5であった。26種類のナンセンス置換およびミスセンス置換を34症例に認めた。アミノ酸配列の変化を生じるこれらの置換は10種類のMODY遺伝子(HNF4A, GCK, HNF1A, PDX1, CEL, PAX4, INS, ABCC8, KCNJ11, RFX6)に認められ、ナンセンス置換が2種類含まれていた(MODY2遺伝子C370X、MODY1遺伝子 W324X)。機能予測により、MODY4遺伝子R148G、MODY9遺伝子R121W、MODY12遺伝子G826V、MODY13遺伝子E140Kの4種類は病因と考えられた。MODY9遺伝子R121W は5例(10.1%)に見いだされ、他の2種類は1例ずつに認めた。興味深い事に、2症例で2つのMODY遺伝子の病的変異の併存を認め、1例はMODY4遺伝子R148GとMODY9遺伝子R121W、別の例はMODY2遺伝子C370XとMODY9遺伝子R121Wの併存であった。3種類の変異は未報告であった。
【結論】 48例中8例(16.7%)に病因と考えられる変異を同定した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

予定通り解析が進行し、昨年は米国人類遺伝学会で発表した(ポスター)。会場では同様のテーマで研究している海外の研究者と議論が出来て参考になり、有意義であった。得られた結果については、rare variantかpathogenic variantであるかが課題となっている。この解決策としては、1000ゲノムデータ、in house dataに加え、複数のWeb basedのアルゴリズムで検証した。その上でもなお、複数の候補遺伝子のlikely-pathogenicのvariantが同一個体に重複して存在していた。さらに、家系内伝達を明らかにする為にこれらのvaraiantを家系内の糖尿病患者と非糖尿病者について検討したところ、likely-pathogenicのvariantを複数有することで糖尿病の表現型に影響している可能性も考えられた。このように2つの原因遺伝子が同一家系で個体ごとに違った組み合わせで存在しており、糖尿病の表現型も若干異なっている可能性を考えている。これまでに報告されていない、この様に興味深い家系を複数見出した。現在論文作成中である。
最終年度は、未検討の新規サンプルの解析をさらに進める予定である。

今後の研究の推進方策

今年(2019年)は最終年度にあたる。これまで未検討であった新規のサンプルの解析をTargeted Sequenceによってさらに進め、MODYの遺伝子診断を確定するためのサンプルを選択中である。
今年の夏頃までににIon Torrentを用いて統合医科学研究所に依頼して20サンプル程度のTargeted Sequenceが終了できる見込みである。Output Dataの解析は統合医科学研究所の赤川浩之准教授との共同研究によって実施する。赤川浩之准教授はこの方面で一定の業績があり、支援が受けられる事から問題なく研究を遂行可能である。
これによって前年度のTargeted Sequemceと併せて合計で60サンプルのmonogenic diabetes候補患者を用いた網羅的な解析を行ったことになる。60名を対象とした14遺伝子の多因子遺伝子のタ-ゲット解析は、わが国においては知る限り最大希望である。このような研究の報告は未だないので、学術研究として最終年度に論文化するほか、海外の関連する学術集会で発表し討論を深めて来る予定である。
さらに、次年度(2020年度)にこの研究の続きとして、完全には結論付けられない原因遺伝子内のVariantを同一個体が複数の遺伝子において有することの発症における意義について、細胞レベルの解析を共同研究として計画している。

次年度使用額が生じた理由

2018年4月に学内での異動があったため、研究が一時的に遅れしまった。2019年度中に、追加解析にかかる委託費、研究補助に対する謝金、論文投稿の査読費用として全額拠出する予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Low resting energy expenditure in postmenopausal Japanese women with type 2 diabetes mellitus2019

    • 著者名/発表者名
      Ide Risa, Ogata Makiko, Iwasaki Naoko, Babazono Tetsuya
    • 雑誌名

      Diabetology International

      巻: 10 ページ: 268, 278

    • DOI

      10.1007/s13340-019-00391-z

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Expression of mutant mRNA and protein in pancreatic cells derived from MODY3- iPS cells2019

    • 著者名/発表者名
      Shigeharu G. Yabe1, Junko Nishida, Satsuki Fukuda, Fujie Takeda, Kiyoko Nasiro, Kazuki Yasuda, Naoko Iwasaki, Hitoshi Okochi
    • 雑誌名

      PLOS ONE

      巻: accepted ページ: accepted

    • DOI

      10.1371/journal.pone.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Diagnosis and Genetic Counseling for Mitochondrial Disease at the Institute of Medical Genetics, Tokyo Women’s Medical University2018

    • 著者名/発表者名
      Mari MATSUO, Naoko IWASAKI, Kayoko SAITO
    • 雑誌名

      Journal of Tokyo Women's Medical University

      巻: see DOI ページ: 1-8

    • DOI

      10.24488/twmuj.2018003

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Screening for mutations in 14 kinds of MODY genes in patients with MODY in Japanese by next generation sequencing2018

    • 著者名/発表者名
      Naoko Iwasaki, Toshiyuki Yamamoto, Hiroyuki Akagawa, makiko Ogata, Kayoko Saito
    • 学会等名
      The American Society of Human Genetics 2018 Annual Meeting
    • 国際学会
  • [学会発表] Screening for mutations in 14 kinds of MODY genes in patients with MODY in Japanese by next generation sequencing2018

    • 著者名/発表者名
      Naoko Iwasaki, Toshiyuki Yamamoto, Hiroyuki Akagawa, makiko Ogata, Kayoko Saito
    • 学会等名
      Annual meeting of Japan Sosiety of Human Genetics 63rd Congress
    • 国際学会
  • [学会発表] 糖尿病診療における個別化医療の実践2018

    • 著者名/発表者名
      岩﨑直子, 尾形真規子,土屋美保, 大澤真里, 富岡光枝,馬場園哲也
    • 学会等名
      第61回日本糖尿病学会
  • [学会発表] ビタミンDが培養膵β細胞ミトコンドリア電子伝達系のグルコース反 応性に及ぼす影響2018

    • 著者名/発表者名
      尾形真規子,岩﨑直子,井出理沙, 富岡光枝,馬場園哲也
    • 学会等名
      第61回日本糖尿病学会

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公開日: 2019-12-27  

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