研究実績の概要 |
【背景と目的】 Maturity onset diabetes of the young (MODY) は1種類の遺伝子の異常によって発症する糖尿病で原因遺伝子は14種類である。次世代シーケンサーを用いて14種類のMODY遺伝子の網羅的スクリーニングを行う事を目的とした。 【対象と方法】対象は30歳以下で糖尿病と診断され、GAD抗体陰性、BMI≦30の48症例である。糖尿病家族歴は問わなかった。 HaloPlex Target Enrichment System を用いてMODY14遺伝子のコーディング領域をカバーするプライマーセットを作成し、Illumina MiSeq system v3 (Illumina, San Diego, CA) で解析した。塩基配列はGRCh37を対照としてANNOVERによって抽出し、1000 genome、ClinVer、ExAcでフィルタリングの後、SIFT、PoluPhen-2、CADDなどのアルゴリズムによる変異の機能予測を行った。本研究は本学ゲノム解析研究に関する倫理審査委員会の承認を得て実施された。 【結果】 48例の糖尿病診断時年齢は16.5歳、BMIは21.5であった。26種類のナンセンス置換およびミスセンス置換を34症例に認めた。アミノ酸配列の変化を生じるこれらの置換は10種類のMODY遺伝子(HNF4A, GCK, HNF1A, PDX1, CEL, PAX4, INS, ABCC8, KCNJ11, RFX6)に認められ、ナンセンス置換が2種類含まれていた(MODY2遺伝子C370X、MODY1遺伝子 W324X)。機能予測により、MODY4遺伝子R148G、MODY9遺伝子R121W、MODY12遺伝子G826V、MODY13遺伝子E140Kの4種類は病因と考えられた。MODY9遺伝子R121W は5例(10.1%)に見いだされ、他の2種類は1例ずつに認めた。興味深い事に、2症例で2つのMODY遺伝子の病的変異の併存を認め、1例はMODY4遺伝子R148GとMODY9遺伝子R121W、別の例はMODY2遺伝子C370XとMODY9遺伝子R121Wの併存であった。3種類の変異は未報告であった。 【結論】 48例中8例(16.7%)に病因と考えられる変異を同定した。
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