研究課題
本研究では、ゲノム編集を利用したノックインの技術改良を行うための研究を行っている。これまでに、標的配列がゲノムDNAとドナーDNAの相同配列上に位置するように設計した2個のCas9 nickaseをドナーDNAとともに細胞に導入するノックイン法(Tandem Paired Nicking法;TPN法)の研究を行ってきた。そして、TPN法によって編集ゲノム部位の望まぬランダム変異(挿入欠失)が従来の6%未満に抑制され、高精度なノックインが可能になることを見出した。また、TPN法によって、Cas9 nucleaseを用いる従来の方法と遜色ないか場合によってはそれを上回るノックイン効率が達成されることを見出した。さらに、TPN法はDNA損傷反応を制御するp53シグナル経路の活性化を引き起こさず、かつp53活性によるノックインへの干渉を受けないことも明らかにした。すなわちTPN法は精度と安全性が高く、かつ十分な効率を維持したノックインを可能にすることが示された。今年度は、このようなノックインが可能になる仕組みを理解するための一助として、TPN法で導入される4個のニックの意味合いを探る実験を行った。具体的には、まずCas9 nickase標的配列2ヶ所のうちの1個または2個を変異させた変異ドナー一揃いを用意し、それに合わせて変異配列を標的とするCas9 nickaseも用意した。次に、それぞれを組み合わせて細胞へ導入することにより、合計4個のCas9 nickase標的部位中1個、2個、3個へニックが導入されるような条件設定を行った。これらの各条件によるノックインを同時に施行して効率を比較した結果、ゲノムDNAおよびドナーDNAに導入されるニックの個数(0個、1個、2個)が持つ重要性をそれぞれ把握することができた。この結果から、今後TPN法の施行条件やツールの設計などを調整することによってノックイン効率をさらに向上し、同法の洗練された手順を確立する研究に向けて有用な情報が得られた。
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