研究最終年度の2019年度においては、ゲノムワイドに転写因子が物理的に結合する配列をgDB-seq法を用いることで同定した。転写因子は、農業形質として非常に有用な避陰反応のハブ転写因子であるHY5と、ソルガムの茎の乾汁性/湿汁性を決定するDry遺伝子を選んだ。まずHY5とは、赤色光受容体であるフィトクロムと、青色光受容体であるクリプトクロムの両方から光シグナルを受け取ることで、下流遺伝子の発現制御を行う転写因子である。特にソルガムにおいては、隣の植物と重なり陰になった際に、避陰反応により植物を成長させたり、日光を効率的に利用できるよう葉の角度を鋭角にするなどの調整が行われる。今回の結果では、3073カ所(1908遺伝子)への結合が見つかっており、シロイヌナズナでの知見と同様に、HY5自身にも強く結合していることが確認できた。また、茎の乾汁性/湿汁性を決定するDry遺伝子においては、この転写因子が発現することで細胞死を招き、その結果ソルガムの茎が乾燥することが2018年に中国と東大のグループから別々に発表された。茎の乾汁性はバイオエタノールの原料となるソルガムにおいては重要な形質であり、またそのゲノムワイドな発現制御は調べられていない。そこで今回gDB-seqにより同定を行ない、その結果、324カ所(121遺伝子)への結合を確認した。2018年度において進めたCAGE法によるゲノムワイドな転写開始点情報を活用することで相乗的にデータ解析を進めることができた。個々の遺伝子における詳細な結果は、MOROKOSHI (http://sorghum.riken.jp)データベースより公開している。
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