研究課題/領域番号 |
17K07266
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
長沼 孝雄 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 上級研究員 (40466462)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 長鎖非コードRNA / 転写制御 / 代謝調節 / 細胞機能 / 肝臓 |
研究実績の概要 |
本研究は、栄養シグナルに依存したlncRNAによる代謝調節とそれに応答した細胞機能制御の分子機構を解明することを目的としている。本研究では、申請者が発見したlncRNA-FR1による①代謝関連遺伝子の発現制御、②代謝調節の分子機構、③代謝調節に応答した細胞機能制御といった3項目に関連した問題点に取り組むことで目的達成を目指している。 平成29年度は、lncRNA-FR1による代謝関連遺伝子の発現制御について明らかにするために、①lncRNA-FR1によるCATX遺伝子転写活性化の検証、②lncRNA-FR1によるCATX遺伝子のエピゲノム修飾制御の解析、③lncRNA-FR1によって制御される代謝関連遺伝子の網羅的探索という3つの研究項目を実施した。 まず、lncRNA-FR1によるCATX遺伝子転写活性化について検証を行ったところ、CRISPRaと呼ばれる内因性遺伝子強発現系を利用して本来の遺伝子領域からlncRNA-FR1を強発現させたところ、CATX遺伝子の発現促進が確認され、lncRNA-FR1がCATX遺伝子の転写促進に寄与することが明らかになった。次に、lncRNA-FR1によるCATX遺伝子のエピゲノム修飾制御についてクロマチン免疫沈降法によって解析を行った。lncRNA-FR1の機能抑制によりCATX遺伝子上の転写活性化マークであるヒストンアセチル化の減少が観察されたことから、lncRNA-FR1はCATX遺伝子上のエピゲノム修飾を亢進させ、転写促進していることが明らかになった。さらに、lncRNA-FR1によって制御される代謝関連遺伝子の網羅的探索をDNAマイクロアレイを利用することで行った。lncRNA-FR1を機能抑制した肝細胞で発現が50%以下に減少する遺伝子リストをマイクロアレイの結果から抽出し、パスウェイ解析を実施したところ、lncRNA-FR1が複数のアミノ酸代謝酵素の遺伝子転写の促進にも関わることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、計画通り研究が進展し、①lncRNA-FR1がCATX遺伝子転写を活性化していること、②lncRNA-FR1がCATX遺伝子のエピゲノム修飾を亢進することでCATX遺伝子の転写促進していること、③lncRNA-FR1がCATX遺伝子以外に複数のアミノ酸代謝酵素遺伝子の転写促進にも関わることの3点を明らかにすることが出来た。lncRNA-FR1によるアミノ酸代謝酵素遺伝子のエピゲノム修飾制御の解析については現在進行中ということもあり、おおむね順調に進展しているという判断に至った。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に則って研究を推進していく予定である。lncRNA-FR1が、どのように代謝調節に関与するのかをCATXのアミノ酸トランスポーター活性の変化とそれに伴う細胞内の代謝物の変化を解析することで明らかにする。また、lncRNA-FR1による代謝調節が、どのように細胞機能を制御しているのかをmTORC1の活性の変化とそれに伴う細胞機能の変化を解析することで明らかにしていく予定である。 また29年度の研究成果から、lncRNA-FR1がCATXの他に複数のアミノ酸代謝酵素の遺伝子転写の促進にも関わることを明らかになってきた。今後は、lncRNA-FR1がアミノ酸代謝酵素遺伝子群の転写を促進することで、どのように代謝を調節し、細胞機能を制御しているのかについても検討を実施していく予定である。
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