研究課題/領域番号 |
17K07273
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
高倉 耕一 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (50332440)
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研究分担者 |
西田 隆義 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (60208189)
中西 康介 滋賀県立大学, 環境科学部, 研究員 (90726746) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 2種の繁殖の同時性・同所性 / 野外調査 / CAPSマーカー / 人工繁殖 |
研究実績の概要 |
これまでの予備調査で示唆されていた通り、ビワコガタスジシマドジョウ(以下コガタ)とオオガタスジシマドジョウ(オオガタ)は、同時的かつ同所的に繁殖をしていることが野外調査から裏付けられた。2017年は繁殖地に遡上した成魚のうちオオガタが占める割合が大きかった。また、採集された全ての稚魚についてミトコンドリアDNAマーカーを用いて種判別を行った。その結果、2017年度にはコガタの再生産はごく僅かであったことが明らかになった。 天敵・餌生物に関する調査も行った。繁殖地に優占する天敵はアメリカザリガニであり、2種の稚魚にとって好適な餌であるワムシ類は、繁殖期後半に増加した。これらの傾向は、特にコガタ稚魚の再生産を低下させる要因にはなりえず、コガタ減少の要因として天敵や餌の重要性が大きくないことを示唆するものであった。 また、2種間の性的相互作用をより詳しく明らかにするために、核DNAのマーカーが必要とされていたが、核DNAを対象としたCAPSマーカーを新たに開発した。予備解析として、一部の稚魚について本マーカーを適用した分析を行ったところ、これまでのところ雑種個体は見つかっていない。まだ予備解析の段階ではあるものの、この結果はこの2種の性的相互作用が雑種形成ではなく、種間での性的ハラスメントなどの行動的な繁殖成功度の低下であることを示唆している。 行動実験を行う準備として、ドジョウの種苗生産を専門的に行う業者に、コガタの種苗生産の試験を委託した。コガタは現状で極めて個体数が少なく、行動観察等のために野外個体を採集することは、本種の絶滅のリスクを直接的に高める懸念があるためである。本委託試験の結果、コガタの稚魚が得られたので、現在複数の施設で分散飼育を行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
野外調査は、計画通りの内容・回数を実施することができ、予測範囲内の結果を得た。 分子マーカーの開発についても、予定通り核DNAを標的とした新マーカーを開発することができた。 当初予想以上にビワコガタスジシマドジョウ個体群の衰退が著しいため、個体群保護の観点から採集個体を用いた行動観察は控えることとした。代替策として人工繁殖個体を用いることにしたが、その採卵・孵化・生育は順調である。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画通りに研究を推進する。 野外調査は今後も継続し、新しい分子マーカーも用いて、2種間の相互作用を明らかにする。 行動観察は育成中のビワコガタスジシマドジョウ個体が性成熟するのを待って、実施する予定である。 オオガタスジシマドジョウについては、現在、野外でも一定数は見られるので、野外での観察を試みる。 過去に開発したミトコンドリア・マーカーと、2017年度に開発した核マーカーを用い、環境DNAの手法を応用して、琵琶湖流入河川におけるスジシマドジョウ種群の分布調査も行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は滋賀県内での調査を重点的に行い、当初予定していた中国地方における近縁種の分布状況調査については、文献調査のみを行った。次年度に野外調査を行うため、その旅費等に充当する予定である。
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