研究課題/領域番号 |
17K07274
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
岩崎 望 立正大学, 地球環境科学部, 教授 (20193724)
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研究分担者 |
宇田 幸司 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 講師 (10448392)
井口 亮 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (50547502)
鈴木 知彦 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 教授 (60145109)
長尾 正之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (70251626)
長谷川 浩 金沢大学, 物質化学系, 教授 (90253335)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 宝石サンゴ / 幼生分散 / コネクティビティ / Rad-seq解析 / カンタキサンチン |
研究実績の概要 |
SNPs解析:昨年度得られた日本近海産(小笠原、高知、鹿児島、沖縄)アカサンゴ84群体のSNPsデータを、解析ソフトStacksの最新バージョンで解析し直し、中立な遺伝子座の絞り込みを行った。また、モモイロサンゴ、シロサンゴのSNPs解析用試料を採集し、CHAOS液によるサンプル固定を行った。DNA濃度をより厳密に揃えるため、Qubitフルオロメーターを購入し、サンプル間でのDNA濃度の均一化してRAD-seqを行うための下準備を進めた。 鹿児島及び沖縄近海においてSNPs解析用のシロサンゴとモモイロサンゴを採集した。 RNA seq解析:次世代シークエンサーを用いたmRNAシークエンス解析に用いることができる高純度なTotal RNAを宝石サンゴから抽出・精製する方法の検討を行った。幾つかの試薬とRNA精製キットを組み合わせることで、アカサンゴ、シロサンゴ、モモイロサンゴから高純度のTotal RNAを十分量精製することに成功した。 飼育実験:人工飼育技術を確立するために、シロサンゴの飼育実験を行い適した餌の探査を行った。造礁サンゴ飼育用人工餌料4種により飼育し、炭素・窒素安定同位体比分析により摂取の有無を介した結果、それらの内の1種を摂食していることが明らかになった。 色素成分解析:イメージング質量顕微鏡によりアカサンゴ、モモイロサンゴの骨軸断面について有機成分の濃度分布を解析した。色素成分であるカンタキサンチンおよびそのフラグメントイオンに相当する質量範囲でそれぞれMSイメージング像を測定した結果、両種ともカンタキサンチン関連成分は試料全体に一様に分布し、色調から判断される年輪の部分に局在を示すイメージは得られなかった。カンタキサンチンの色の発色には別化合物の共存が必要である可能性がある。 流向流速の測定:2018年4月に鹿児島県竹島北西海域水深133mの宝石サンゴ生息域に流向流速計を設置した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モモイロサンゴとシロサンゴについて、ほぼ分布域をカバーする海域(小笠原、高知、鹿児島、沖縄)から約50群体の試料を収集することができた。それらの解析は年度内には間に合わなかったが、昨年アカサンゴで解析に成功していることから2019年度に確実にデータを得られると考えている。また、RNA-seq解析のための前処理法を確立し、解析に十分な量の試料を得ることができた。これらのことから概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
SNPs解析:昨年度採集されたモモイロサンゴとシロサンゴからDNA抽出を行い、RAD-seqを実施する。そしてこれまで得られたRAD-seqデータをプールして集団解析を行い、遺伝的集団構造解析を行う。得られた成果を、査読付き国際誌に投稿できるようにまとめる。また、種の同定が不明なサンプルに関しても、SNPsデータによる系統解析を行い、他種との比較を行って系統的位置づけを明らかにする。 RNA seq解析:昨年度に精製したアカサンゴ、シロサンゴ、モモイロサンゴのTotal RNAを用いて、次世代シークエンサーによるmRNAシークエンス解析を行う。得られた断片的な塩基配列データからdenovoアセンブリを行い、これら3種のサンゴの全発現遺伝子配列の決定と比較を行う。 飼育実験:より天然に近い環境と餌料を与えることで人工飼育技術の向上を図る。摂食の確認については、炭素・窒素安定同位体比分析を用いる。 色素成分解析:宝石サンゴの色彩発現には、カンタキサンチンの他にタンパク質の関与が想定される。 骨軸薄片試料について、イメージング質量顕微鏡を用いてタンパク質成分の濃度分布を解析し、色彩の微細構造との相関を検討する。また、骨軸の無機元素を対象とした同位体分析によりその分布像を求める手法を検討する。 流向流速の測定:昨年度設置された流向流速計を回収する。遺伝子解析で得られたコネクティビティ推定結果と実際の流れとを照合することで要請の分散過程を推定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度にモモイロサンゴとシロサンゴのSNPs解析を行う予定であったが、試料の採集に時間がかかり、年度内に行うことができなかった。そのため、予算を2019年度に繰越、同年度に解析を行う。
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