研究課題/領域番号 |
17K07278
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
島 弘季 東北大学, 医学系研究科, 助手 (00448268)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | RNA / N6-メチルアデノシン / 転写後調節 / S-アデノシルメチオニン |
研究実績の概要 |
S-アデノシルメチオニン(SAM)は、ヒストンやDNAのメチル化反応においてメチル基ドナーとなる重要な代謝物であり、細胞内においてメチオニンアデノシルトランスフェラーゼ(MAT)よって合成される。細胞内におけるSAMの生産は厳密にコントロールされており、その鍵の一つは、MAT mRNAの安定性が細胞内SAM量に応じてフィードバック制御されることである。申請者らは、MAT2A発現のフィードバック制御においてmRNA 3' 非翻訳領域(3' UTR)のヘアピン構造中の特定のアデノシン部位のN6-メチル化修飾(m6A)が重要であり、この修飾にメチル基転移酵素METTL16が関わることを見出した。本研究は、MAT2A mRNAと相互作用するRNA結合タンパク質を探索し、MAT2A mRNA安定性制御の分子メカニズムを解明することを目的とする。 前年度までに、MS2システムを利用して、HeLa細胞においてルシフェラーゼ遺伝子とMAT2A 3' UTRが融合したmRNAに結合するタンパク質を分離し、LC-MS/MSによって同定する系を構築した。今年度はこの系を用いて、野生型 3' UTRと、METTL16の標的であるアデノシン部位を置換した変異型3' UTRとの間で結合タンパク質を比較した。また、細胞培地にSAMあるいはMAT阻害剤シクロロイシンを添加することで細胞内SAM量を増減したときの3' UTR結合タンパク質の変動を調べた。その結果、現時点までに、METTL16の標的RNAの一つであるU6 snRNAに結合することが知られているタンパク質、またRNAエキソソームのサブユニットの一つが注目因子の候補として得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、野生型3' UTRに特異的に結合するもの、また細胞内SAM応答的に結合が変動するものに注目する予定であった。両方の条件を満たすタンパク質としてMETTL16が再現性よく得られたことから、実験は一定の成功を収めていると考えられるものの、その他では、特に後者の条件を再現性よく満たすタンパク質は多くはなかった。mRNAの安定性に関わる因子であっても、必ずしもmRNAへの結合が変動するとは限らないということもあるので、前者の条件のみに限って再度結果を洗いなおすことも視野にいれようと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
得られた候補因子および再度洗いなおした因子について、RNAiによる発現抑制を行い、細胞内SAM応答的なMAT2A mRNA量変動に及ぼす影響を調べる。 申請者らは、MAT2A 3' UTRに6個存在するMETTL16標的m6A部位のうち、3'末端に近いものが細胞質内でのmRNA安定性制御に関わっている可能性を考えている。そのため、3'末端側のm6A部位のみに変異を導入した3'UTRとの比較も行いたい。
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