研究実績の概要 |
本研究の目的は、「核様体凝集をトリガーとした複合ストレス環境への適応」という新たな応答戦略の実証である。最終年度は、黄色ブドウ球菌のMrgAタンパク質による核様体凝集を通じた遺伝子発現制御の実態(ゲノム位置依存性など)の解明、を中心に研究を進め、以下の点を明らかにした。 ①酸化ストレスがない場合、MrgAの核様体への結合により、ゲノム全体の非タンパク質コード遺伝子の発現を亢進させる、②酸化ストレス下では、MrgAはOri近傍のタンパク質コード遺伝子の発現を亢進させる、③酸化ストレス下では、同時にMrgAがOri近傍のタンパク質コード遺伝子の発現を抑制することもある。 以上の結果は、MrgAの結合が、①ストレス下と非ストレス下で核様体に異なる状態を作りだすこと、②通常のストレスのない状態では、非タンパク質コード遺伝子を制御し、ストレス下では特定のタンパク質発現の制御と、役割を変えること、③核様体の機能自体は、ストレスの有無によらず維持されていること、④「核様体凝集をトリガーとした複合ストレス環境への適応」の一端を核様体の構造タンパク質が担っていること、を示唆する。 これらの結果について、研究代表者らは、「What Happens in the Staphylococcus Nucleoid under Oxidative Stress? microorganisms, vol.7, 631; doi:10.3390/microorganisms7120631 (2019)」にて報告した。
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