今年度は、DNAへ超らせん構造を導入しながら蛍光解析を行うシステムを用いて、λファージDNAにリアルタイムに超らせんを導入しながら蛍光観察を行った。その結果、超らせんの導入量に応じて伸張したDNAの長さが減少することが示された。これは超らせんによりDNAにトロイダル状の構造が導入されたことを示している。しかし、超らせん導入による2次構造の変動は検出できなかったので、今後の取り組みが求められる。 また、昨年度に引き続き、合成様式の異なる2つのDNAポリメラーゼについて解析を進めた。DNA合成速度の1分子解析を行った結果、processivityの高いT7 DNA ポリメラーゼでは、平均値144base/sec、標準偏差16base/secの計測結果が得られ、ポリメラーゼ分子ごとの合成速度はあまりばらついていないことが明らかになった。また、DNAポリメラーゼのダイナミクスを解析するために、反応開始後にDNAポリメラーゼ供給を停止するパルスチェイス実験を行った。その結果、合成開始後88秒経過後にDNA合成が停止したことが明らかになった。これはDNAポリメラーゼがDNAから遊離したことに原因があると考えらるので、この観測結果よりprocessivityは11.1kbaseであると推定することができた。同様の実験をprocessivityの低いDNAポリメラーゼⅠを対象にも行ったが、DNA合成の停止を観測することはできなかった。DNAポリメラーゼⅠはprocessivityが低いため、結合と遊離を繰り返していると考えられるが、その頻度が高いため、連続合成長が顕微鏡の分解能を下回っているためと考えられる。 これらの方法により、異なったprocessivityの挙動の詳細が明らかになり、この手法は他のポリメラーゼのキャラクタリゼーションにも適用できると考えている。
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