慢性的な低レベル紫外線(CLUV)環境下ではヌクレオチド除去修復(NER)の欠損細胞が増殖可能であることから、紫外線損傷を修復できない細胞においても細胞増殖を可能とする耐性機構が存在すると考えられる。今年度、本研究課題では、2倍体においてカナバニンに耐性となるコロニーの出現頻度を指標に突然変異、染色体喪失、ヘテロアリル間の相同染色体間組換え頻度を同時に測定できる株を構築し、CLUV環境において測定した。その結果、NER欠損株ではカナバニン耐性頻度が顕著に増加し、さらに、95%のカナバニン耐性コロニーが相同染色体間のHRによって生じていることがわかった。そこで、HR経路に関与するrad51の欠損株も用いて実験を行なった結果、予想に反してカナバニン耐性頻度がさらに増大した。そこで、この内訳を詳細に解析したところ、約半数が染色体喪失によるものであることがわかった。さらに、残りの半数に関しては、HR型のカナバニン耐性コロニーと判断されたが、これらはいずれも細胞増殖に顕著な遅延が見られたことから、染色体レベルの異常を伴っていることが示唆された。同様の条件において、RPA-YFPの細胞内局在を観察したところ、NERとHR経路を欠損した細胞において顕著なRFPフォーカス形成割合の増加が観察された。また、他の株において観察されるCLUV依存的なRPAフォーカスと異なり、核内の複数箇所に散らばったような局在パターンが観察され、RPAフォーカスの局在パターンと染色体異常との関連性が示唆された。以上の結果より、HR機構はCLUV耐性において重要な役割を果たしている一方で、通常起こらないような相同染色体間の組換えが増大するため、結果としてヘテロ接合性の喪失(LOH)等のゲノム不安定性を誘発する原因となっていることがわかった。
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