• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2018 年度 実施状況報告書

ヒトミトコンドリアDNAホモプラスミー化の分子基盤に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 17K07294
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

凌 楓  国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 専任研究員 (70281665)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードミトコンドリア / 相同組換え酵素 / 二本鎖DNA切断 / mtDNAの欠失変異 / ヘテロプラスミー
研究実績の概要

今年度において出芽酵母のミトコンドリアの相同組換え酵素MhrがmtDNAの二本鎖DNA切断(DSBs)部位の周辺に結合すことを米国の研究者達は報告し、Mhr1を介した相同的組換えがmtDNAのDSB切断修復においても最も主要な経路であることを提唱した(Prasai et al., Mitochondrion 42:23-32(2018))。このような背景を基に解析を進み、Mhr1のヒトホモログhsMhr1の機能に注目して主に以下の研究成果を挙げた。
(1)HeLa細胞においてhsMhr1を大量発現させると、過酸化水素で酸化ストレスが増強した場合、mtDNAのコピー数が倍増した。(2)iPS細胞をキサンチンオキシダーゼの活性で過酸化水素を作り出す化合物であるヒポキサンチンで処理すると同様にmtDNAのコピー数が倍増した。(3)出芽酵母のMHR1が破壊されると、mtDNAの断片化によるmtDNAの欠失変異が起きることをサザンブロード解析で見出した。この結果からMhr1がミトコンドリアゲノムの完全性維持に欠かせないことが示唆された。また、MHR1の過剰発現は、 abf2 null mutationとmhr1-1との二重変異細胞おいてmtDNAの欠失変異による呼吸機能欠損細胞の生成を防げることを見出した。(4) 胎児肺由来の正常二倍体線維芽細胞、或いは新生児皮膚線維芽細胞において hsMhr1をコードする遺伝子をノックダウンすることでmtDNAの欠失変異を示すミトコンドリアのcommon deletion が顕著に増加し、ミトコンドリアのcommon deletionに起因するヘテロプラスミー化が進行することを見出した。これらの結果から発がんやミトコンドリア病などに密接に関係する欠失変異mtDNAによるヘテロプラスミー化の防止にhsMhr1の機能が欠かせないことが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

酵母の最初のミトコンドリアDNAの組換え酵素Mhr1の機能に関する研究を先行させているので、確実にそのホモログの解析を通して機能を明らかにすることができました。
ヒトの健康を脅かす病原性的な欠失変異mtDNAによるヘテロプラスミー化の防止にhsMhr1の機能が欠かせないがわかったことは計画になかったことで、期待以上のことです。

今後の研究の推進方策

MELAS患者のヘテロプラスミーの程度について3243A→G変異で新たに出現するApaI制限酵素切断部位をApaIに対する感受性の変動で測定できる [Goto et al.(1990) Nature, 348, 651]。現時点で、酵母のMhr1はホモプラスミーの成立に機能する遺伝子として唯一同定されたタンパク質である。本研究では、3243A→G変異が36%を示すMELAS細胞を用いてhsMhr1やhNth1の過剰発現、また、それぞれの遺伝子の発現に対するRNA干渉による抑制が3243変異mtDNAの割合の変動に与える影響を調べる。また、RRM3遺伝子をノックダウンし、チェックポイントを活性化したMELAS細胞においてROSの発生量を測り、正常と変異mtDNAの分離が起きるかどうかを調べる。さらにhsMHR1の過剰発現と RNA干渉による発現抑制が正常と変異mtDNAの分離に与える影響を調べることでhsMhr1の役割を明らかにする。これらのアプローチを通してヒト細胞において、チェックポイント活性化の際、核では、Rad51等の組換え酵素が核染色体DNAの損傷を修復することが知られているが、ミトコンドリアではhsMhr1が損傷修復以上に、mtDNAのコピー数を増加しながら、正常と変異mtDNAの分離も促進することを明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

ネイティブな研究者と共著したので英文校閲が不必要でした。
来年度は細胞毎にヘテロプラスミーのレベルを調べるためにFluidigm C1 という装置を使います。これに必要な試薬などが高価です。これからさらに購入する予定です。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Prevention of mitochondrial genomic instability in yeast by the mitochondrial recombinase Mhr12019

    • 著者名/発表者名
      Feng Ling, Eliot Bradshaw, Minoru Yoshida
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 9 (1) ページ: 5433~5445

    • DOI

      10.1038/s41598-019-41699-9

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Mitochondral DNA recombination is critical for sustaining yeast chronological lifespan2018

    • 著者名/発表者名
      Feng LING
    • 学会等名
      Annual Meeting of Aging project 2018

URL: 

公開日: 2019-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi