研究課題/領域番号 |
17K07294
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
凌 楓 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 専任研究員 (70281665)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ミトコンドリアDNA / ヘテロプラスミー / ホモプラスミー / ローリングサークル型mtDNA複製 / マイトファージの活性化 / iPS細胞 / 酸素消費速度 / mtDNAの欠失変異 |
研究実績の概要 |
再生医療の重責を担う人工多能性幹細胞(iPS細胞:induced pluripotent stem cell)は変異ミトコンドリアDNA (mtDNA)をもつヘテロプラスミーであり、ヘテロプラスミーの進行がミトコンドリア呼吸能に依存するATP生産に悪影響を及ぼすことが考えられる。しかし、iPS細胞のヘテロプラスミーのレベルを低く抑える手法がないのも実情である。 適量の過酸化水素でヒト細胞を処理すると、ローリングサークル型mtDNA複製を通してmtDNAの分離が促進されることが既に報告した。今年度では、mtDNAの分離を促進し、ミトコンドリアの機能障害を来すほど変異mtDNAを豊富にして活性化したマイトファージで除去するという薬剤処理で欠失変異によるヘテロプラスミーのレベルを低下させるという未曾有の方法を開発した。新たに開発した手法でホモプラスミー化したiPS細胞の呼吸能について細胞外フラックスアナライザーを用いて調べた。その結果として51600個のiPS細胞に対して薬剤で処理した後酸素消費速度(Oxygen Comsuption Rate, OCR)が無処理のiPS細胞と比べて約3倍増加した。また、処理後のiPS細胞は薬物不在でさらに培養してから、OCRが同細胞数の無処理の同iPS細胞(コントロール)のそれと比べると5倍ほど顕著に増加した。これらの結果から開発した新手法を用いるとiPS細胞のホモプラスミー化を促進することでiPS細胞の酸素呼吸速度が改善され、呼吸能を増強することが示唆された。現段階で特許届出が受理され、共同研究の企業のご意見を伺っている段階にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
未曾有のホモプラスミー化の手法を開発しました。より安全なiPS細胞を再生医療への提供を可能にしました。
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今後の研究の推進方策 |
より多種類のiPS細胞を用いて開発した方法がiPS細胞の呼吸能の増強に対する有効性、及び得られた研究結果の再現性を確認して行きたいと考えております。
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