研究課題
Caポンプの輸送サイクルでは、リン酸化中間体(EP)の形成、異性化と加水分解を経由する。EPの異性化(E1PCa2 → E2P + 2Ca2+)では、細胞質領域のA(アクチュエーター)ドメインが大きく回転してP(リン酸化)ドメインと結合する。すると構造変化が膜ドメインの輸送部位に伝わり、閉塞されていたCaが内腔へ放出される。ヘリックスM2は細胞質に露出したM2cと膜貫通のM2mに区別できる。筆者は、その連結部位のG105をAla置換するとATPase活性/Ca輸送を脱共役させることを報告した。今回エネルギー共役におけるM2mの役割を調べる目的で、M2mにGly置換、および”G105A+ M2mのGly置換”のダブル置換を導入し機能解析を行った。Gly置換体のATPase活性はV89G以外では大きく低下しなかった。 ATPase活性/Ca輸送の共役は、Gly置換体ではV89G、V93G以外のGly置換体で強く阻害された。EP-decayはV93Gで強く促進された。ダブル置換体ではG105A/V93Gのみ、G105Aの脱共役、およびEP-decay阻害から救済された。V93Gが共役を保ったままEP-decayを強く促進した結果は、この変異がM2mの構造やM2-M6間の相互作用を変化させてEP異性化、および内腔へのCa放出を促進させたことを示す。これに一致して結晶構造ではE1PCa2でV93がM6と疎水的相互作用し、E2Pで離脱する。野生型ではEP異性化でM2が折れ曲がり、M2mに構造変化が伝達されCa放出が起こる。G105A/V93Gは、この折れ曲がりをバイパスして、Ca-gate開口の構造が変化することが出来ると予想される。以上より、細胞質Aドメインの大きな動きにより駆動されるV93周辺の構造変化が、Ca-gate開口とCa放出に重要なswitchであると考えられる。
すべて 2020 2019
すべて 学会発表 (10件) (うち国際学会 1件)