研究課題/領域番号 |
17K07298
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小柴 生造 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 教授 (70332301)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 19F-NMR / In-Cell NMR / 動的構造 / Keap1 |
研究実績の概要 |
本研究では、申請者がこれまで開発してきた各種19F標識技術、In-Cell NMR法、および常磁性効果による構造解析法を組み合わせて、細胞内におけるタンパク質の様々な分子認識機構を解析し、本来タンパク質が機能しているin vivo環境下での動的構造変化を解明することを目的とする。本研究の平成29年度の成果は以下の通りである。 本研究計画で解析するタンパク質について19F標識を行うためにそれぞれ大量発現系の構築と発現の最適化を行うとともに、各タンパク質についてNMRを用いた基質認識機構の解析を開始した。まず既に発現系が確立しているVRK1に関してはトリフルオロメチオニン標識体の解析を進めた。一方多数の基質を選択的に認識する酸化ストレス応答タンパク質Keap1については標識方法の最適化を進めるとともに、2量体で働くKeap1と基質である転写因子Nrf2の相互作用をNMRで高次構造レベルで解析する系を確立した。現在もう一方の基質である各種低分子(親電子性物質)とKeap1の相互作用について、特にシステイン残基への結合に伴うKeap1の構造変化が、Nrf2との相互作用に与える影響をNMRを用いて高次構造レベルで解析中である。またドメイン間の構造変化を19F-NMR法と常磁性効果により解析する系を構築するため新たに3つのドメインから構成されるアミノ酸代謝酵素phenylalanine hydroxylase (PAH)の大量発現系を確立し、標識条件の検討を行った。また比較対照として異なるドメイン構成を持つ別の代謝酵素ASPGの大量発現系も同様に構築を行い安定同位体標識を進めている。今後はこれらのタンパク質を細胞に導入し、細胞内における構造変化を高次構造レベルで解析するための基盤を確立する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、申請者がこれまで開発してきた各種19F標識技術、In-Cell NMR法、および常磁性効果による構造解析法を組み合わせて、細胞内におけるタンパク質の様々な分子認識機構を解析し、本来タンパク質が機能しているin vivo環境下での動的構造変化を解明することを目的とする。 平成29年度には、本研究計画で解析する各タンパク質の発現系の構築に成功し、19F標識を含む各種安定同位体標識の条件を検討した。また基質認識に伴う高次構造変化を詳細に解析する系の開発を進め、本研究の目標であるin vivo環境下での動的構造変化を解明するための基盤を確立した。
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今後の研究の推進方策 |
細胞内におけるタンパク質の様々な分子認識機構の解明に向けて、平成29年度に発現系を構築した各タンパク質について、基質認識に伴うタンパク質の高次構造変化を各種19F標識技術や19F-NMR計測技術を中心に適宜最新の計測技術を組み合わせて解析を進める。平成30年度は特に常磁性効果を用いた遠位距離情報の解析を重点的に実施し、ドメイン間の構造変化を重点的に解析する。特に基質結合に伴い大規模な構造変化が起こることが想定されているKeap1やPAHを重点的に解析し、19F-NMRと常磁性効果の組み合わせによる解析技術の確立を目指すとともに、細胞内で同様に解析を進めin vivo環境下での動的構造変化の解明をめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では平成29年度に各種19F標識アミノ酸を含む様々な安定同位体標識タンパク質を合成して基質認識に伴う高次構造変化の解析や細胞内環境下における構造変化の解析を行う予定だった。これまでにそのために必要な各種タンパク質の大量発現系の構築、及び標識効率の最適化を行ってきた。しかし装置の使用時間の制限等の為、19F測定条件や細胞内導入の効率化などの条件検討に時間がかかり、次年度に安定同位体標識タンパク質の大量合成やNMR測定等実験の一部を繰り越す必要が生じたため、次年度使用額が発生した。
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