加齢性に伴い発症する疾患の多くにタンパク質の異常凝集は関与しており、不溶性の凝集形態でも病態が変わると示唆されている。アルツハイマー病を含む神経変性疾患もタンパク質の異常凝集形成(アミロイド線維)がその発症機序に関与していることから、治療・予防方法の開発は急務である。さらにII型糖尿病等を含む生活習慣病にも関与しており、若年層もタンパク質の異常凝集に注意が必要である。いかにタンパク質の異常凝集形成を阻害するかが、予防医学として求められている。本申請課題は、タンパク質の異常凝集形成抑制・阻害が疾患の発症予防に必要だと考え、阻害方法として日本に存在する海藻に着目し、その作用機序の詳細を調べている。 最終年度は、平成30年度に得られた成果をより詳細に調べた。これまでは水による海藻抽出に関する最適条件を検討し、アミロイド線維形成阻害に関する評価を行ってきた。別の評価方法を取り入れることで海藻抽出物の有用性を実証すべく肥満に関わる酵素の活性阻害評価を調べると、抗肥満に効果を示す有意な差が得られた。この結果は、本申請課題で得た海藻抽出物は幅広く有効利用できると示唆された。また、有機溶媒抽出方法の改良も検討した。有機溶媒抽出の問題は有機溶媒の蒸発等で抽出温度を高くできないことである。ジムロートを用いて蒸発した有機溶媒を還流させることで、使用する有機溶媒の沸点温度付近で使用可能となった。さらに溶液を撹拌することで、従来法で数日の時間を要して得られた抽出物が数時間で同等の収率となり、検討した海藻の中には有意に線維形成阻害を示した。細胞毒性評価は、すでに阻害効果が得られている海藻成分は、評価方法と再現性を検討して細胞毒性を軽減させることがわかった。さらに、その海藻成分を多く含む海藻を水抽出して得た海藻抽出物の細胞毒性を調べると、海藻成分単独よりは効果が弱くなったが、有効性は見出された。
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