1.小胞体を高速撮影した画像の統計処理によって、新たにロバストで正確な定量法を開発し、小胞体がほぼ全域において25Hz程度の方向性を欠いた動きを持つことを示した。2.小胞体を高輝度蛍光タンパクで標識した細胞において、膜を透過性にする処理によって得られる細胞質を欠損したsemipermealizedな状態で揺らぎを再現する系を構築した。このような揺らぎの再構成系を用いる事で、この動きは膜成分と、ATPあるいはNADPHのいずれかだけで発生することを見出した。3.この現象は小胞体を細胞質側から抗体でコートすると完全に停止することから、小胞体において揺らぎが観測されないドメインでは、蛋白性コートが膜の細胞質側に付加されていることが予測された。4.本現象は、グルタチオンペルオキシダーゼ様の活性を持つことが知られているebselenによってμMレベルで特異的に停止されることがわかった。5.本現象は、蛍光相関解析法(FCS)で計測される見かけの蛋白質拡散を10%程度遅らせることが示された。6.分泌系カーゴ成熟化との関連を調べるために検討した単一光子ヒストグラム解析(PCH)を用いる事で、カーゴ構造形成因子のオリゴマー状態が他のタンパクにより制御を受けることを示した。7.産生量の多いカーゴとして細胞内輸送が困難な巨大タンパクであるコラーゲンファミリーに注目して、その小胞体からの輸送過程の精密な解析を共同研究により進めた。8.モデル培養細胞だけでなく、個体レベルでの解析も行ったところ、体細胞だけでなく、卵子においても小胞体の揺らぎは発生していることを確認し、受精に関わる新たな因子と現象を発見した。
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