研究課題
ヌクレオソームコア(NCP)の構造はヒストンやDNAの修飾、すなわちエピジェネティックな修飾が転写開始のシグナルと理解されているものの、修飾が施されたNCPの構造解析例は少ない。そこで、結晶構造解析では得られない情報をネイティブな状態で質量分析により獲得すること、および気相におけるフレキシブルな領域の振る舞いを解析することを目的として以下のような実験を行い成果が得られた。(1) 大腸菌発現系でDNAメチル化酵素 M.SssI を調製した。この酵素を用いて601配列を有するDNAオリゴマーをメチル化した。一方、大腸菌発現系で4種類のヒトヒストンタンパク質H2A、H2B、H3、H4を調製し、これらを用いてヒストン八量体を再構成した。メチル化されたDNAとヒストン八量体でヌクレオソームコア(NCP)を再構成し、電気泳動で精製後、ネイティブな条件での質量分析を行った。メチル化DNAを構成要素とするNCPのマススペクトルの測定により、インタクトな状態を質量分析で観測することに世界で初めて成功した。(2) 2つの601配列DNAを20塩基のリンカーDNAでつなぎ、さらに両端に20塩基のリンカー領域を有する約360塩基対のDNAオリゴマーを調製した後、これを用いてdi-NCPを作製した。ネイティブな状態で質量分析することにより、目的通りのdi-NCPが得られたことを確認した。(3) di-NCPの大量調製に必要なDNAオリゴマーの配列を複数含むプラスミドの調製に着手した。(4) di-NCPに対してヒストンアセチル化酵素p300によるアセチル化を行った。
2: おおむね順調に進展している
メチル化DNAで構成されたNCPのマススペクトルの測定に世界で初めて成功した。di-NCPを調製し、ヒストンアセチル化酵素p300HATドメインによるアセチル化の条件検討に着手した。
アセチル化を施した後に再構成したdi-NCPと、再構成した後にアセチル化したdi-NCPの構造特性の違いを解析する。メチル化したDNAからdi-NCPの調製を試みる。
次年度使用額が生じた理由:物品費の購入を予定より低額に抑えられたため。機器の補修が必要なかったため。使用計画:質量分析装置関連のメンテナンスと消耗品の購入を計画する。
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Science
巻: 356 ページ: 205-208
10.1126/science.aak9867