研究課題/領域番号 |
17K07314
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
原 幸大 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (80729343)
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研究分担者 |
橋本 博 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (40336590)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | X線結晶構造解析 / 染色体凝縮 / コンデンシン / タンパク質複合体 / タンパク質間相互作用 / 染色体再構成系 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、染色体凝縮に関わるコンデンシンの制御サブユニットの結晶構造を決定すると共に、染色体再構成系を用いた構造機能相関解析を通じて染色体凝縮の作用機序を原子レベルで明らかにすることである。染色体凝縮は正常な細胞分裂を行うための必須機能である一方、その機能不全は細胞のがん化や小頭症を引き起こす。従って、コンデンシンの分子メカニズムを理解することで染色体凝縮を標的とした新規抗がん剤の創出が期待でき、産業活用にインパクトを与える。 R1年度はコンデンシンI制御サブユニットであるCAP-G-H-DNA複合体の結晶化条件の探索を中心に行った。具体的には様々な長さの二本鎖DNAを用いて複合体を調製し、共結晶化を行った。その結果、板状の微結晶が得られ、PFにてX線回折実験を行った結果、タンパク質特有の回折点を確認できた(未発表)。しかし、分解能が低く、空間群などの構造解析に必須の結晶学的パラメータの決定には至らなかった。今後は、シーディングによる結晶成長の促進、クライオプロテクタントの検討による回折強度データの質の改善などを試みることで構造解析可能なデータを収集する。また、一本鎖DNAとの複合体の調製も視野に入れて、結晶化条件の再探索も進める。 コンデンシンIのもう一つの制御サブユニットであるCAP-D2-H複合体については、最近、酵母ホモログの構造が先行して報告された(Hassler et al., Mol Cell, 2019)。現在、我々が用いているヒトホモログと酵母ホモログの発現領域を比較したところ、Proboscisと呼ばれるヘリックス領域の扱いに違いがみられた。酵母ホモログの構造を参考に、組換えタンパク質発現系の再構築と結晶化条件の探索を進める。コンデンシンII制御サブユニットに関しては、ヒトを含む脊椎動物由来の組換えタンパク質発現系を構築し、性状評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コンデンシンI制御サブユニットの一つであるCAP-G-H-DNA複合体の微結晶が得られたが、構造解析に必須の空間群などの結晶学的パラメータの決定には至っていない。今後、結晶の更なる最適化を進め、CAP-G-H複合体をサーチモデルとした分子置換法による位相決定を試みる。
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今後の研究の推進方策 |
CAP-G-H-DNA複合体など、より高次の複合体の構造解析に重点を置く。他の制御サブユニットの調製方法の確立、及び結晶化条件の探索を継続して行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
【次年度使用額が生じた理由】 コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響により、当初予定していた学会での研究発表、研究会への参加、研究打ち合わせなどの出張が全てキャンセルとなった。また、研究計画に必要な遺伝子合成を中国に研究所を持つ民間会社に依頼していたが、納期の大幅な遅れが生じ、当該年度での納品が困難となった。 【使用計画】 遺伝子合成が完了したため、次年度に支払請求を行う。また、合成遺伝子を使用して組換えタンパク質発現系を作製するのに必要なプライマー、酵素、試薬、組換えタンパク質の調製に必要な培地、バッファー試薬、プラスチック製品などの消耗品費を計上する。
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