研究課題/領域番号 |
17K07317
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
村川 武志 大阪医科大学, 医学部, 助教 (90445990)
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研究分担者 |
林 秀行 大阪医科大学, 医学部, 教授 (00183913)
馬場 清喜 公益財団法人高輝度光科学研究センター, タンパク質結晶解析推進室, 研究員 (00437344)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | X線結晶構造解析 / HAG法 |
研究実績の概要 |
本研究は,近年開発されたHAG法(湿度調整と水溶性ポリマーのコーティングを用いたタンパク質結晶マウント法)をさらに発展させ,非凍結結晶を用いて広pHおよび広温度領域でX線結晶構造解析を行い,プロトン化状態および温度変化よって引き起こされるコンフォメーション変化の制御機構を解明することを目指している.本年度は土壌細菌由来銅含有アミン酸化酵素(AGAO)を材料とし,触媒機構中に観察されるコンフォメーション変化機構のメカニズムを明らかにした. AGAOは,活性中心に補酵素トパキノン(TPQ)および二価銅イオンを含み,第一級アミン類の酸化的脱アミノ反応を触媒する.TPQは前駆体Tyr残基から銅イオン存在下で自己触媒的に生成する.補酵素TPQは銅イオンに配位したOn-Cu型と配位しない構造Off-Cu型の2つの構造をとることが知られている.溶液実験では,On-Cu/Off-Cuの2つのコンフォメーションの割合が温度およびpHにより変動することから,コンフォメーション変化が微小なエネルギー状態の差,および複数の解離基のプロトン化状態に制御されているのではないかと考えられていた.このため本年度は, HAG法を用いて,温度およびpHを厳密に制御した環境下でのAGAO反応中間体のX線結晶構造解析を行った.各pHでの構造を比較することより,我々がこれまでに提案した反応スキームをさらに拡張できる見込みである.また,各温度での構造変化をプロットすることにより,これらの構造変化の熱力学的パラメーターを導出することに成功した(in crystallo thermodynamic analysis).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は研究初年度であり,測定条件を決定することと,得られた条件を用いて予備的測定を行うことが目標であった. 本研究を行う上では同程度の大きさの結晶を大量に必要とするため,結晶化条件の見直しをおこなったほか,HAG法に必要な水溶性ポリマーおよび可塑化剤の選定などを行った.これらは比較的早い時点で成功したため,本年度後半は予備的な測定を行った.得られた結果は予備的なものであるが,構造解析によりpHおよび温度により構造が大きく変化することを確認できた.またこれらの変化は同時に行った結晶顕微分光によっても観察できた.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度で測定条件をほぼ固めることができたので,平成30年度では本測定を行う.実験条件をより細かく振ることにより,より詳細な構造データを得る.各pHにおける構造データを比較することにより,複数の解離基のプロトン化状態に制御された触媒機構の解明,および,各温度における構造データのvan't hoffプロットを行うことによる熱力学的パラメータの導出を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は研究費の節約に努めた結果,18万円程度次年度に繰り越せた.これらは主に結晶調製用の試薬および測定施設(SPring-8)までの旅費に使用する予定である.
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