研究課題/領域番号 |
17K07319
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研究機関 | 公益財団法人微生物化学研究会 |
研究代表者 |
藤岡 優子 (野田優子) 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 研究員 (80399964)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | オートファジー |
研究実績の概要 |
選択的オートファジーは,その不全がパーキンソン病などの神経変性疾患の原因となる医学的にも極めて重要な細胞内クリアランス機構である.オートファジーの始動はプレオートファゴソーム構造体(PAS)が担うが,飢餓時のバルクオートファジーと選択的オートファジーとではPASの組成が異なることが知られている.本研究は飢餓時のPAS(飢餓PAS)と比べて理解が遅れている選択的オートファジー特異的に機能するPAS(選択的PAS)について,その特異的構成因子であるVac8を中心とした構造生物学的研究を展開することで,選択的オートファジー始動の分子機構を解き明かすことを目的とする.選択的オートファジーの始動機構が明らかとなることで,重篤な疾病の新規予防・治療法の確立への新たな道を拓くことが期待できる. 今年度は,選択的PASの構成因子の決定と相互作用解析,またVac8とVac8-Atg13複合体の結晶化スクリーニングを予定していた.Vac8およびAtg13それぞれの削り込みをしたプルダウン実験を繰り返し行うことによって,Vac8とAtg13間の結合に必要な最小の領域を同定した.さらに,さまざまな長さのタンパク質同士を組み合わせながら結晶化スクリーニングを行った結果,良好な結晶が得られ,Vac8の結晶構造を決定することができた.しかしながら,今のところVac8に結合しているAtg13の電子密度が確認できていない.一方,他のグループからVac8とNvj1というタンパク質の複合体のX線結晶構造解析の論文が報告された.われわれが得ている結晶の分解能よりも高い2.4オングストロームの結晶構造であり,コンストラクトを参考にするなどして,早急にAtg13との複合体の結晶構造を決定したい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述の通り,今年度は選択的PASの構成因子の決定と相互作用解析,またVac8とVac8-Atg13複合体の結晶化スクリーニングを予定していた.Vac8とAtg13間の相互作用解析の成果によって,結晶化スクリーニングの末に良好な結晶が得られた.さらに,Vac8の結晶構造を決定することができた.残念なことに,今のところVac8に結合しているAtg13の電子密度が確認できていないが,他のグループから報告されたVac8-Nvj1複合体の結晶構造のコンストラクトを参考にするなどして,早急にAtg13との複合体の結晶構造を決定したい.
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今後の研究の推進方策 |
まずはVac8-Atg13複合体の結晶構造を決定する.そのために,Vac8-Nvj1複合体の結晶構造のコンストラクトや結晶化の手法を参考にしつつ,Atg13側の長さを変更や結晶化条件の最適化を行う.良好な結晶が得られた場合は,大型放射光施設SPring8もしくはKEKにて高分解能の回折データを収集する.位相は分子置換法にて速やかに決定する. Vac8と結合する選択的PASの因子はAtg13以外殆ど知られていない.選択的PASの因子でタンパク質が調製可能なものから順次,相互作用解析を行い,可能なら共結晶化を行う.
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