研究課題
転写開始反応はゲノムDNAからの遺伝情報の読み出しにおける最初の反応である。転写基本因子TFIIDは全遺伝子の9割の発現制御に関わり、転写開始において中心的な役割を果たす因子であるが、15種類のサブユニットから構成される分子量1MDaの複合体であるため、高分解能の立体構造は未だ解析されていない。応募者はこれまでにTFIIDの大量精製法を確立してきたが、TFIID単独では形状が不安定なため、さらに5種類の相互作用因子を精製した。次の問題は因子を混合する順序だが、我々は近年開発した分子進化の新しい指標に基づき、進化の過程で誕生した順に混合するという着想に至った。本研究では、A. TFIIDの結晶化と結晶構造解析、B. 分子進化的解析、C. TFIIDを含む複合体の再構成と立体構造解析、を行う。2019年度は、A.C.に注目して研究を進めた。TFIIDは分子量が大きくサブユニット数も多い複雑な複合体であるため、結晶化だけでなく、クライオ電子顕微鏡による解析も進めた。2018年3月に、200kVのクライオ電子顕微鏡(Talos Arctica, Falcon3EC)がKEKに導入されたことを受けて、まずはその立ち上げを行なった。2018年12月には110kDaのタンパク質を2.85angstrom分解能で決定することに成功し、論文投稿準備中である。また、TFIIDのように分子量の大きな対象を扱う準備として、860kDaの酵素についても2.24angstrom分解能でクライオ電顕構造を決定し、論文投稿しrevise中である。現在、KEKクライオ電顕の装置責任者として共同利用を推進しつつ、TFIIDに相互作用するpol IIについての単粒子解析を進めている。
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bioRxiv
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https://doi.org/10.1101/2020.05.03.074773
https://www2.kek.jp/imss/sbrc/