研究実績の概要 |
ウイルスRNA複製複合体(replication complex)はウイルス遺伝子複製を担う分子装置であり、その会合は極めて正確な機能遂行において不可欠なプロセスである。本研究ではフラビウイルス科に属するデングウイルスやアルファウイルスのRNA複製の主要酵素であるRNA依存性RNAポリメラーゼを中心に構成される複製複合体の構造解析を実施し、フラビウイルスおよびアルファウイルスにおけるRNA複製の構造基盤を解明することを目的とする。 本年度は当センターに設置されているクライオ電子顕微鏡によるデングウイルス複製複合体の構造解析を実施した。巨大なデングウイルス複製複合体(NS2B3-NS3-NS5-dsRNA)として調製された画分について解析を実施し、5.1オングストローム分解能のクライオ電顕像を得ることに成功し、NS3 helicase、NS5 MTase、NS5 RdRpの各ドメインおよびdsRNAをそれぞれアサインすることに成功した。NS3 helicaseドメインがNS5のMTase、RdRpの両ドメインに相互作用するように位置しており、dsRNAはNS5 RdRpの活性中心からNS3 helicase、NS5 MTaseの両ドメイン間かけて位置していた。 また、デングウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼNS5について、フラグメントライブラリーを用いたの阻害剤ハイスループットスクリーニングを実施し、フラグメント複合体のX線結晶構造解析を決定した。これらの結果について誌上発表(H. Shimizu et al. Discovery of a small molecule inhibitor targeting dengue virus NS5 RNA-dependent RNA polymerase. PLoS Neglected Tropical Diseases. Vol. 13 Issue 11, 2019)を行った。
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