研究課題
ロドプシンは自然界に普遍的に存在する光受容膜タンパク質であり、内包する色素レチナールの光異性化反応をきっかけとして、種々の光中間体を経由する光化学反応を示し、その間に機能を発現する。本研究は、真正細菌から見出された外向きNa+ポンプ(NaR)の分子機構解明を目指して、Na+輸送時に起こす光化学反応の詳細な解析、及び、新規NaRの分子特性の解明を行ってきた。成果の概要は以下の通りである。3)が最終年度に得た成果である。1) アルカリ湖から単離された真正細菌Indibacter alkaliphilusが持つNaR (IaNaR)の大腸菌における大量発現系を構築し、1 L培地あたり、約40 mgの精製タンパク質が得られるようになった。2) IaNaRをナノディスクへ再構成し、様々なNa+濃度、及び、静水圧下における光化学反応を過渡吸収分光法を用いて詳細に解析した。その結果、IaNaRは、K、L、M、O1、O2、N、NaR’中間体を順に経由する光反応サイクルを周り、O1生成時にNa+を取り込み、O2崩壊時にNa+を放出すること、また、Na+取り込みにはタンパク質内部の水和が必要であること、さらに、O1からO2の遷移は不可逆的なことを明らかとした。3) IaNaRが属するNaRグループとは進化的に異なり、N末端配列が共通して短いグループが存在する。その中から、放線菌 Micromonospora coxensisの持つNaR(McNaR)の大腸菌発現系を構築し、分子特性を調べた。その結果、McNaRはH+輸送能を持たない一方、高濃度のK+存在下では、K+も輸送可能であることがわかった。この結果から、N末端配列は、輸送基質選択に関わると考えられた。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
Scientific Reports
巻: 9 ページ: 10711
10.1038/s41598-019-47178-5