研究課題/領域番号 |
17K07327
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
船越 祐司 筑波大学, 医学医療系, 助教 (30415286)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 低分子量G蛋白質Rab / 細胞内膜輸送 / RabGAP / TBC蛋白質 |
研究実績の概要 |
本研究では、RabGAPドメインであるTBCドメインを有しながら、GAP活性に必須のアミノ酸を欠くユニークなRabGAP(非定型RabGAP)に着目し、クラスリン非依存性に取り込まれる膜蛋白質(CIEカーゴ)の細胞内輸送における機能解明を目的とする。本年度は、上記のようなTBCドメインを有し、さらに脱ユビキチン化ドメインも有するTRE17について、1)TRE17によるがん細胞浸潤能亢進メカニズムの解明、および、2)CIEカーゴの取り込みと輸送において中心的な役割を果たす低分子量G蛋白質Arf6とTRE17との関連性を解析し、以下の結果を得た。 2種の高浸潤性がん細胞株MDA-MB231(乳癌細胞由来)、HT1080(線維肉腫由来)を用いて解析したところ、TRE17は、CIEカーゴの一つでありがん悪性化と深く関わるCD147を脱ユビキチン化し、リソソームへの移行を抑制することで細胞膜表面上でのCD147の発現量を増加させること、その結果、下流のmatrix metalloproteinasesの発現を上昇させ浸潤能を亢進することを明らかにした。さらに、癌細胞の増殖、接着、遊走、浸潤に関わるCD98やCD44のリサイクリングをTRE17が促進することも見出しており、これらの因子を介して癌細胞の悪性化に関わることが示唆される。 一方で、Arf6との機能的な関連性を解析したところ、TRE17はArf6との相互作用を介してArf6を脱ユビキチン化することを見出した。興味深いことに、TRE17による脱ユビキチン化はArf6蛋白質の安定性には影響がなく、TRE17は、Arf6の活性や局在制御をユビキチン-脱ユビキチンサイクルの調節により制御していることが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のように、令和3年度にはTRE17によるがん細胞浸潤能亢進メカニズムを明らかにしており、新型コロナウイルス流行の影響によりやや遅れがでたものの、研究成果をまとめた論文を学術誌に投稿し、現在リバイス中である。 TRE17の他にも、TBC1D3、TBC1D24についても解析を進めており、両者がRab22Aを介して、CIEカーゴのリサイクリングに重要なチューブ様リサイクリングエンドソームの形成を促進することを明らかにしている。一方で、両者は異なるメカニズムでRab22Aの機能を調節していることも見出している。さらに、TBC1D3、TBC1D24がCIEカーゴのリサイクリングを介して、細胞の接着、遊走、増殖を制御することを示唆する結果を得ているTBC1D24に関する研究成果は、令和2年度に論文が掲載されている。 このように、上記3つのRabGAPについて、CIEカーゴ輸送における機能、その分子メカニズムの解明、およびそれらを介した細胞機能制御、といった当初計画した解析を実施し、一定の成果を上げた。これらのことから、本研究課題は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は研究期間を再延長し、令和4年度は、これまで成果を上げてきたTRE17、TBC1D3について、以下の解析を加える。 TBC1D3:これまでにRab22Aを活性化することを見出しており、その活性化メカニズムを明らかにする。さらに、TBC1D3は複数のがんとの関連が報告されていることから、がん細胞の増殖、腫瘍形成、転移における機能解析、その際にどういったCIEカーゴの輸送を介するのかを明らかにする。 TRE17:上記のように、TRE17がCD147の輸送制御を介してがん細胞の浸潤能を亢進させることを明らかにしているが、CD98やCD44といった因子についても、これらの細胞内輸送を介してTRE17が癌細胞の悪性化に関わるのかを検証する。また、TRE17によるArf6の脱ユビキチン化の意義、それを介してどのような細胞機能を制御しているのかを明らかにする。Arf6も癌細胞の浸潤・転移に深く関わることを研究代表者らや他研究グループが明らかにしており、TRE17-Arf6経路の癌の悪性化への関与を検討する。一方で、令和2年度までに、TRE17がCIEカーゴを認識し、脱ユビキチン化、リサイクリングを促進するには、TRE17をCIEカーゴを含むコンパートメントに局在化させることが必要にして十分であることを見出しており、そのTRE17の細胞内局在を規定する因子の候補として脂質修飾因子を同定している。この因子によるTRE17局在制御機構、機能制御についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの流行により、当初予定した計画の一部が実施できず、論文投稿がずれ込み延びてしまい、本年度中にリバイス実験を完了することができなかったため。次年度も引き続きリバイス実験を実施する必要があり、本助成金を使用する必要が生じた。 次年度に延長した予算は、論文投稿料、追加実験に必要な細胞培養関連試薬、遺伝子工学・生化学関連試薬、動物購入費に使用する予定である。
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