骨格筋の成熟過程は筋再生や筋疾患発症のメカニズムを解明する上で重要な現象である。多核の骨格筋細胞は成熟過程において中心に一列に並んだ核(中心核)が細胞膜直下へと移動する周辺核化が起こるが,その仕組みは不明である。周辺核化が阻害される中心核病の原因遺伝子として膜変形タンパク質amphiphysin2/BIN-1(Amph2)が同定されており,膜結合に必要なBARドメイン内の変異とN-WASPとの結合に必要なSH3ドメイン内の変異が報告されている。本研究では周辺核化に置けるN-WASPとAmph2の役割を解明することを目的としている。まずマウス再生筋より単離した筋芽細胞の3次元初代培養法を確立し,培養5日目以降において周辺核化が観察されることを確認した。この条件においてAmph2は主にT管に局在していたが,周辺核化の過程においては周辺核周囲にも集積することを明らかにした。また,中心核病の原因となる変異はN-WASPとの生化学的な結合と周辺核周囲における共局在を抑制させた。さらにAmph2の変異はN-WASP-Arp2/3複合体によるアクチン重合活性を上昇させなかった。加えて,latrunculin B処理を行うことにより周辺核化が抑制された。すなわちN-WASPとAmph2はアクチン重合を介して周辺核化に関わる可能性が考えられた。
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