研究課題/領域番号 |
17K07330
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
福田 智行 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (90415282)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | TOR / TORC1 / シグナル伝達 / 細胞増殖 / 分裂酵母 / 栄養飢餓 |
研究実績の概要 |
真核生物間で高度に保存された2種のTOR複合体(TORC1とTORC2)はTORキナーゼを中心とするタンパク質複合体で、栄養や成長因子に応答して細胞の増殖や代謝などをコントロールする。これまでに分裂酵母を用いた因子探索を行い、TORC経路の上流からTORCの活性を調節する因子と、下流でTORCによる増殖制御を担う候補因子とを複数同定してきた。本研究では、これら新規因子のTORC経路における機能と制御を明らかにし、TORCの「刺激に応じた活性調節機構」と「増殖制御の機序」を分子レベルで理解することを目的とする。 H29年度は、TORC1の活性制御に関わるRag二量体Gtr1-Gtr2(哺乳類のRagA/B-RagC/D二量体に相当)と結合する因子として同定した4つのタンパク質が構成する複合体について、詳細な解析を行った。4つのタンパク質のうちの1つが、哺乳類のRag二量体の制御因子であるRagulator複合体の構成因子Lamtor2と配列上の相同性を示すため、4つのタンパク質をそれぞれLam1からLam4と名付け、同定した複合体が分裂酵母のRagulatorに相当する可能性を検証した。その結果、Lamタンパク質の遺伝子破壊株ではいずれもRag二量体の液胞局在が欠損しており、哺乳類のRagulatorと同様にLamタンパク質もRag二量体を液胞にアンカリングしていることが明らかになった。一方で、Lamタンパク質やRag二量体の欠損株ではTORC1の活性が過度に上昇するため、哺乳類とは異なり、分裂酵母のRag二量体とRagulatorはTORC1を負に制御していることが示唆された。これを支持するように、分裂酵母のTORC1はRag二量体やLamタンパク質の欠損株でも液胞に局在していた。したがって、TORC1の局在を介さない経路でTORC1活性を制御する機構が存在しているといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、因子探索で得られたタンパク質の特徴付けを行うことができた。Ragulatorに相当するタンパク質複合体を分裂酵母で見出すことに成功し、この複合体が新規の機構でTORC1の活性を負に制御していることが明らかになったため、今後の研究展開につながる成果が得られたといえる。さらに、成果の一部を論文発表することもできた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きLamタンパク質に関する詳細な解析を行うとともに、TORC1の上流から活性を調節する因子の候補として得られているGATOR複合体の分裂酵母ホモログについても同様に解析を行い、TORC1を負に制御する機構についてさらなる検証を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗に応じて当初想定していた予算執行計画の一部を変更したため、未使用額が生じた。これは主に、想定していたよりも早くまとまったデータセットが得られたため、成果を論文発表することに尽力したことによる。H30年度はTORC1経路を負に制御する経路を明らかにするため、酵母細胞を用いた解析のための培地と消耗品、タンパク質解析用試薬、酵素やオリゴヌクレオチドを含むDNA解析用の試薬に加えて、成果を発表するための費用に使用する。
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