研究課題
Gタンパク質共役型受容体(GPCR)のシグナル生成の仕組みを理解するため、蛍光1分子観察法によって、細胞膜上でのGPCRのダイマー形成の直接観察と操作を組み合わせて研究を行った。まず、ダイマー形成とGPCRの活性化の関連を調べるため、BiFC(Bimolecular Fluorescence Complementation)という方法を用いてダイマーだけを可視化した。さらに、活性化したβ2アドレナリン受容体(B2AR, GPCR)の細胞質領域を認識するナノボディとの二色同時蛍光1分子観察によって、リガンド添加前でもダイマー中の分子の一部は活性化していることが直接示された。さらに、GPCRの動的なモノマー・ダイマー変換の意義を検討するため、人工的なダイマー形成を誘導した。まず、FKBP_F36Vタグで標識したβ2アドレナリン受容体(B2AR-FKBP)と、ダイマー化リガンドAP20187を用い、蛍光1分子観察によってホモダイマー形成を観察した。その結果、AP20187添加によって、野生型B2ARの動的なダイマーと異なり、色素寿命以下では解離しない安定ダイマーが生じた。また、AP20187添加後に細胞内のカルシウム濃度が一過的に上昇することも分かった。すなわち、安定ダイマー形成によって、細胞内シグナルが生じることが初めて示された。以前の私の研究で、リガンド添加によって動的ダイマーがやや安定化すること、動的なダイマーがGPCRの基礎活性(リガンドに依存しないシグナル)を生じることがわかっていた。今回の結果と合わせると、リガンド添加時には、動的ダイマーから生じる基礎活性がダイマーの安定化によって強められ、リガンドとダイマー形成のシグナルが組み合わさることで生理的なシグナルが生じることが示唆された。
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巻: 21 ページ: 106-137
10.1111/tra.12718
https://www.infront.kyoto-u.ac.jp/research/lab24/