研究課題/領域番号 |
17K07337
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
本庄 雅則 九州大学, 生体防御医学研究所, 特任准教授 (90372747)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | プラスマローゲン / 脂質恒常性 / 脳 / コレステロール |
研究実績の概要 |
ペルオキシソーム形成障害マウスの小脳および腎臓では、プラスマローゲン生合成の律速酵素であるfatty acyl-CoA reductase 1 (Far1) の発現レベルが野生型マウスに比して増加するとの結果を得た。しかしながら、これらの組織におけるFAR1の転写の亢進は見られなかった。したがって、小脳や腎臓でのプラスマローゲン生合成は、細胞内プラスマローゲン量依存的なFar1の分解を介した発現レベルの調節によって制御されるものと推察される。 プラスマローゲン生合成制御に必須なプラスマローゲンの感知は細胞膜内葉でなされ、その障害はFar1の発現レベルを増加させることを明らかにしている。この知見に基づき、細胞膜内葉のプラスマローゲンの局在性の低下が原因と目されるFar1の発現レベルの上昇と細胞膜外葉におけるプラスマローゲンの増加を指標とし、プラスマローゲンの細胞膜内葉への偏在性を担うフリッパーゼの候補を見出した。 プラスマローゲン生合成の2番目のステップを触媒する酵素の発現を抑制する2種のプラスマローゲン合成障害性の細胞株をグリア細胞由来培養細胞を用いて樹立した。いずれの細胞でもコレステロール生合成を担うsqualene monooxygenase (SQLE)の発現の増加とコレステロール生合成の抑制が認められた。SQLEの発現増加は、スクアレンからジエポキシスクアレンの合成を促進し、コレステロール生合成に必須なモノエポキシスクアレンの合成を抑制するため、コレステロールの生合成が低下したと推察される。また、ペルオキシソーム形成障害マウスの小脳においてSQLEの発現レベルが野生型マウスに比して増加するとの結果を得た。しかしながら、SQLEのmRNA量の増加は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
個体におけるプラスマローゲン生合成がプラスマローゲン量依存的なFar1の発現レベルの調節によって制御されるとの結果を得た。また、プラスマローゲン生合成制御に必須な細胞膜内葉へのプラスマローゲンの偏在性を担うフリッパーゼの候補を見出した。加えて、ペルオキシソーム形成障害マウスの小脳やグリア細胞由来培養細胞のプラスマローゲンの減少によってSQLEの発現が増加することも見出した。これまでに明らかにしてきたプラスマローゲン欠損細胞におけるSQLEの発現増加がコレステロールの生合成を抑制するとの知見から、脳でのプラスマローゲンの減少はコレステロール生合成を障害すると推察される。これらの成果から、ほぼ順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に見出したフリッパーゼの臓器発現分布を明らかにする。また、前年度に見出したFar1の発現量が増加する臓器におけるプラスマローゲン量を測定し、Far1の発現量の結果と併せて、組織におけるプラスマローゲン量とFar1の発現レベルの相関を明らかにする。 次に、肝臓のプラスマローゲン生合成制御機構を明らかにする。他の臓器と異なり肝臓のプラスマローゲン生合成能は低く、また合成されたプラスマローゲンは細胞外へと分泌されるため肝臓内にはプラスマローゲンはほとんど存在しない。従って、肝臓に特有なプラスマローゲンの生合成制御機構の存在が推察される。ペルオキシソーム形成障害マウスの肝臓におけるFar1の発現レベルを野生型と比較するとともに、肝臓由来培養細胞を用いて、肝臓におけるプラスマローゲンの生合成制御が、これまで明らかにしてきた細胞内プラスマローゲン依存的なFar1の発現レベルの調節でなされるのかも含めて明らかにする。
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