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2018 年度 実施状況報告書

個体におけるエーテル型リン脂質プラスマローゲンの生合成制御機構と生理機能の解明

研究課題

研究課題/領域番号 17K07337
研究機関九州大学

研究代表者

本庄 雅則  九州大学, 生体防御医学研究所, 共同研究員 (90372747)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードプラスマローゲン / 脂質恒常性 / 脳 / コレステロール
研究実績の概要

プラスマローゲンの生合成は、ペルオキシソーム局在性C末アンカー蛋白質fatty acyl-CoA reductase 1 (Far1)の細胞内プラスマローゲン量依存的な分解調節により制御されること、すなわちFar1がプラスマローゲン合成の律速酵素であると明らかにしてきた。これまでに、プラスマローゲン合成不全細胞ではFar1の分解が抑制され、Far1のタンパク質レベルが野生型細胞に比して増加することを見出している。加えて、野生型と比較してプラスマローゲン量が約50%程度まで減少するペルオキシソーム形成障害マウスの小脳と腎臓では、FAR1mRNAは野生型と同程度であるもののFar1タンパク質レベルは増加することも見出している。今年度、プラスマローゲン合成初発酵素であるdihydroxyacetonephosphate acyltransferase のノックアウトマウスの小脳でも、野生型マウスと比較してプラスマローゲン量が著しく減少し、Far1タンパク質レベルが増加することを見出した。
次いで、プラスマローゲンの恒常性維持の生理学的意義の解明を試みた。これまでに、プラスマローゲン欠損細胞ではコレステロールの生合成が抑制されることを見出している。加えて、プラスマローゲン欠損細胞では、コレステロール生合成の中間体であるスクアレンのエポキシ化を触媒する酵素であるsqualene monooxygenase (SM)の分解が抑制され、その結果SMのタンパク質レベルが増加するためコレステロールの生合成が抑制されるとの障害機構を明らかにしている。これらの知見に基づき、上述の2種のプラスマローゲン合成障害マウスの小脳においてSMのタンパク質レベルを検証したところ、プラスマローゲン欠損細胞と同様に、野生型に比してSMのタンパク質レベルの増加とともに、コレステロール量の有意な減少を見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

プラスマローゲンが約50%減少するペルオキシソーム形成障害マウスおよびプラスマローゲン合成不全のマウス小脳において、Far1のタンパク質レベルの増加を見出した。これらの成果は、個体においてもプラスマローゲンの生合成は、プラスマローゲン量依存的なFar1の分解調節により制御されると強く示唆するものである。
さらに、上述の2種のマウスの小脳において、SMのタンパク質レベルの増加とコレステロール量の有意な減少を見出した。コレステロールは末梢組織から脳へは供給されないことから、小脳のプラスマローゲン恒常性維持によるコレステロールの生合成調節の発見は、プラスマローゲン恒常性維持の生理的役割の一端を明らかにする新たな知見といえる。これらの新たな成果を得ていることから、ほぼ順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

ペルオキシソーム形成障害マウス腎臓においてFar1のタンパク質レベルでの増加を見出している。同様の変化が、腎臓以外の主要な抹消組織においても見られるのか検証する。また、小脳以外の脳の領域でのFar1のタンパク質レベルも明らかにする。加えて、プラスマローゲン合成中間体であるアルキルグリセロールを投与したマウスでのプラスマローゲン量とFar1のタンパク質レベルを検討する。これらの成果から、プラスマローゲン量依存的なFar1の分解調節が個体のプラスマローゲン生合成の主要な制御機構であるのかを明らかにする。
次いで、プラスマローゲン合成障害によるコレステロールの生合成抑制に着目し、ペルオキシソーム形成障害マウスおよびプラスマローゲン合成不全マウスに共通な小脳の病態発症機構を明らかにする。
また、アルキルグリセロール投与によってプラスマローゲン量が野生型よりも増加すると推察される肝臓に着目し、プラスマローゲンの増加による個体への影響を明らかにする。これらの研究から、個体におけるプラスマローゲンの恒常性維持の生理的意義を解明する。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)

  • [国際共同研究] ハイデルベルグ大学(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      ハイデルベルグ大学
  • [国際共同研究] ウィーン医科大学(オーストリア)

    • 国名
      オーストリア
    • 外国機関名
      ウィーン医科大学
  • [雑誌論文] An alternative membrane topology permits lipid droplet localization of peroxisomal fatty acyl-CoA reductase 12019

    • 著者名/発表者名
      Exner, T., Romero-Brey, I., Yifrach, E., Rivera-Monroy, J., Schrul, B., Zouboulis, C.C., Stremmel, W., Honsho, M., Bartenschlager, R., Zalckvar, E., Poppelreuther, M., and Fullekrug, J.
    • 雑誌名

      J. Cell Sci.

      巻: 132 ページ: jcs223016

    • DOI

      10.1242/jcs.223016

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Homeostasis of plasmalogens in mammals2019

    • 著者名/発表者名
      Honsho Masanori、Fujiki Yukio
    • 雑誌名

      In Encyclopedia of Food Chemistry

      巻: 2 ページ: 218-223

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Peroxisome biogenesis deficiency attenuates the BDNF-TrkB pathway-mediated development of the cerebellum2018

    • 著者名/発表者名
      Abe Yuichi、Honsho Masanori、Itoh Ryota、Kawaguchi Ryoko、Fujitani Masashi、Fujiwara Kazushirou、Hirokane Masaaki、Matsuzaki Takashi、Nakayama Keiko、Ohgi Ryohei、Marutani Toshihiro、Nakayama Keiichi I、Yamashita Toshihide、Fujiki Yukio
    • 雑誌名

      Life Science Alliance

      巻: 1 ページ: -

    • DOI

      10.26508/lsa.201800062

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Onsite GTP fuelling via DYNAMO1 drives division of mitochondria and peroxisomes2018

    • 著者名/発表者名
      Imoto Yuuta、Abe Yuichi、Honsho Masanori、Okumoto Kanji、Ohnuma Mio、Kuroiwa Haruko、Kuroiwa Tsuneyoshi、Fujiki Yukio
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 9 ページ: -

    • DOI

      10.1038/s41467-018-07009-z

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] オルガネラ間の協奏によるペルオキシソームの機能と恒常性の制御2018

    • 著者名/発表者名
      藤木幸夫, 奥本寛治, 本庄雅則
    • 雑誌名

      生体の科学

      巻: 69 ページ: 591-595

    • DOI

      10.11477/mf.2425200929

  • [学会発表] Pex14欠損マウスにおける小脳形態異常の分子機構2018

    • 著者名/発表者名
      阿部雄一、本庄雅則、藤木幸夫
    • 学会等名
      平成30年度日本生化学会九州支部例会
  • [学会発表] Plasmalogen homeostasis links to cholesterol biosynthesis in brain2018

    • 著者名/発表者名
      Masanori Honsho、Yukio Fujiki
    • 学会等名
      第91回日本生化学会大会
    • 招待講演
  • [学会発表] ペルオキシソーム局在性テイルアンカー型膜タンパク質の輸送局在化機構2018

    • 著者名/発表者名
      奥本 寛治、 田村 茂彦、八木田 悠一、 本庄 雅則、 藤木 幸夫
    • 学会等名
      第41回日本分子生物学会年会

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公開日: 2019-12-27  

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