研究実績の概要 |
研究代表者は4月付けで山陽小野田市立山口東京理科大学薬学部の准教授に着任した。本年度はまず、真核細胞における複製起点二重鎖DNAとの結合に必要なATP結合型ORCの制御に関する論文発表を進めた。これまでに我々は、ORCと複製起点二重鎖DNAとの特異的認識に必要なORCモチーフを見いだし、EOSと命名していた(Kawakami et al., 2015, Sci. Rep.)。我々は、ORCが一本鎖DNA上でアデニンヌクレオチドと無関係に重合することを見いだした。次に我々は、ORCがEOSに依存して重合体を形成し、ORC ATPase活性を促進すると明らかにした。また、酵母やヒトのゲノミクスデータの解析により、ORCの一本鎖DNA結合は複製起点以外の特異的なゲノム部位で起こるという考えが支持された。以上の結果から、EOSはORCに結合した一本鎖DNAによって機能分化し、ORCの自己重合やATPase促進をもたらすと示唆された(Kawakami et al., 2019, Genes Cells)。 次に我々は、ORCのとある非典型DNAとの結合能の試験管内解析を行い、既存の非典型DNA結合蛋白質と同程度の親和性を持つことを見いだした。また、ORCのこの結合に配列選択性があることを見いだした。以上の結果は、ORCの非典型DNA結合が既知の代表的な蛋白質に比類し、ゲノム上の特異的領域で起こるという可能性を支持している(論文執筆中)。 加えて、ORCパラログCdc6に解析を拡張する試みを継続した。本年度は非典型DNAへの結合能が不安定化する変異Cdc6の特異性を明らかにした。また、この変異Cdc6が細胞増殖を阻害する条件を見いだした。以上の結果より、Cdc6の非典型DNA結合に特異的な機能解析が可能となり、この結合能が細胞内で重要な機能を持ちうることが示された(学会発表済み)。
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