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2018 年度 実施状況報告書

糖鎖によるErbBレセプターの物性制御メカニズムとその応用

研究課題

研究課題/領域番号 17K07339
研究機関札幌医科大学

研究代表者

高橋 素子  札幌医科大学, 医学部, 教授 (00303941)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード糖鎖 / ErbB / EGFR / 増殖因子受容体
研究実績の概要

ErbBファミリーは、EGFR、ErbB2、ErbB3、ErbB4の4つの分子からなる増殖因子受容体ファミリーである。いずれも、がんの発症・進展に関与していると考えられており、その制御機構を解明することは重要である。本研究では、N型糖鎖によるErbB受容体の機能制御メカニズムを明らかにすることを目的としている。これまでにEGFRやErbB3のドメインIIIの特定の糖鎖が二量体形成に関与していること、またその糖鎖を欠損した可溶型ErbB3や、可溶型EGFRではシグナル抑制作用が増強することを明らかにしている。平成30年度の研究では、以下のことがわかった。
1)可溶型EGFR、ErbB2、ErbB3、ErbB4の部位特異的糖鎖構造を解析した。糖鎖構造解析は大阪母子医療センター和田芳直博士と当研究室の藤谷直樹博士による。EGFRの二量体形成に関与するN420上の糖鎖、ErbB3の二量体形成に関与するN418上の糖鎖、ErbB4の活性化に関与するN333上の糖鎖は、糖鎖占有率がいずれも100%で、他のコンプレックス型糖鎖と比較してフコース付加が非常に少ない(それぞれ10%以下、30%以下、25%以下)という大きな特徴があった。
2)可溶型ErbB3の熱安定性の解析を行った。北海道大学先端生命科学研究院姚閔博士および加藤公児博士との共同研究による。N418Q糖鎖欠損変異体では野生型と比較して熱安定性が低下することを確認した。
3)可溶型EGFRの大量精製を行い、X線結晶構造解析を試みたが構造が決定できなかった。また、示差走査熱量測定による変性温度の解析でも、データが得られなかった。
4)ErbB4の糖鎖欠損変異体のシグナルの解析を行った。N333上の糖鎖を欠損した変異体では、リガンド非依存性に活性化がみられた。当該糖鎖がシグナル制御に関与していることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成30年度は「ErbB3およびEGFRの糖鎖欠損変異体の物性の解析」を計画していた。可溶型ErbB3については、北海道大学先端生命科学研究院姚閔博士、加藤公児博士との共同研究で、N418Q糖鎖欠損変異体において変性温度が低下することを確認できた。現在論文投稿準備中である。可溶型EGFRは、X線結晶構造解析と示差走査熱量測定および小角散乱解析を行ったが、はっきりしたデータが得られなかった。原因の1つとして、精製タンパク質の量の不足が考えられた。タンパク質の大量調製システムの見直しによって収量を上げることができたので、次年度は物性の解析にあたりたいと考えている。また、分子の構造変化のしやすさ(柔軟性)の指標を引き続き検討しているが、まだアイデアは得られていない。シグナル抑制作用がN420Q糖鎖欠損変異体において増強することについて、論文投稿準備中である。
その他、可溶型EGFR、ErbB2、 ErbB3、ErbB4をCHOK1細胞で発現させたものを用いて、部位特異的糖鎖構造解析を行った。大阪母子医療センター和田芳直博士および当研究室の藤谷直樹助教による解析であるが、これでErbBファミリーの全てのメンバーの糖鎖構造が明らかになった。この結果、二量体形成や活性化に関与する糖鎖では、フコース付加が少ないという共通する構造があることがわかった。また、それらの糖鎖の付加部位ではいずれも糖鎖占有率が100%であることもわかった。以上のことについて論文投稿準備中である。
今後、ErbB2およびErbB4の糖鎖欠損変異体の機能解析と、物性の変化を検討する予定である。物性変化の解析などでまだ解決されていない問題は残されているが、その代わりに部位特異的糖鎖構造解析では成果が上がっており、全体として研究計画自体は順調に進んでいると考えている。

今後の研究の推進方策

平成31年度は、糖鎖の改変が可溶型EGFRの物性に与える影響を引き続き調べる。具体的には、X線結晶構造解析、示差走査熱量測定、小角散乱の解析であるが、いずれもタンパク質を増量することによってデータの改善が可能と考えている。野生型、糖鎖欠損変異体の両方とも大量発現できるクローンが得られており、培養および大量精製を行う予定である。その他、可溶型EGFR同士の相互作用、あるいは可溶型EGFRの構造変化のしやすさ(柔軟性、flexibility)の指標を検討している。これらの新しい実験は以降の研究の大きなポイントとなると考えている。
ErbB2とErbB4の糖鎖欠損変異体の機能解析に関しては、計画通り進める。ErbB2はシグナルの解析が困難なため、内在性ErbB3のみが発現している細胞に外来性にErbB2を発現して野生型と糖鎖欠損変異体のシグナルを比較する。また、これまでの予備実験でG449N糖鎖改変変異体は細胞膜へ移行しないことが示唆されているので、そのメカニズムを解明したいと考えている。また、ErbB4は糖鎖欠損変異体のシグナル解析を進めており、さらに糖鎖欠損変異体の大量生成とその物性の解析を行う予定である。最終的にはErbB受容体の4つのメンバー全てのN型糖鎖の機能を明らかにし、細胞膜受容体一般の糖鎖の機能解明の基礎となるような研究を目指す。

次年度使用額が生じた理由

注文した試薬(pEF5/FRT/V5-DEST)の国内在庫がなく、支払いが当該年度に間に合わなかったため。
pEF5/FRT/V5-DESTは、NIH3T3細胞での恒常発現システムに用いる。
異なる種の糖鎖構造解析を行う。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Impaired Diversity of the Lung Microbiome Predicts Progression of Idiopathic Pulmonary Fibrosis.2018

    • 著者名/発表者名
      Takahashi Y., Saito A., Chiba H., Kuronuma K., Ikeda K., Kobayashi T., Ariki S., Takahashi M., Sasaki Y., Takahashi H.:
    • 雑誌名

      Respir. Res.

      巻: 19 ページ: 34

    • DOI

      10.1186/s12931-018-0736-9.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Mice deficient in aldo-keto reductase 1a (Akr1a) are resistant to thioacetamide-induced liver injury.2018

    • 著者名/発表者名
      Homma T., Shirato T., Akihara R., Kobayashi S., Lee J., Yamada K., Miyata S., Takahashi M., Fujii J.
    • 雑誌名

      Toxicol. Lett.

      巻: 294 ページ: 37-43

    • DOI

      10.1016/j.toxlet.2018.05.015.

    • 査読あり
  • [学会発表] ErbB4のN型糖鎖の機能解析2018

    • 著者名/発表者名
      高橋素子、和田芳直、浅川大樹、有木茂、齋藤充史
    • 学会等名
      第37回日本糖質学会
  • [学会発表] ErbB4の糖鎖による機能制御メカニズム2018

    • 著者名/発表者名
      高橋素子、和田芳直、浅川大樹、有木茂、高宮里奈、齋藤充史
    • 学会等名
      第91回 日本生化学会大会

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公開日: 2019-12-27  

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