研究実績の概要 |
軸索ガイダンスで普遍的に駆動されているシグナル伝達経路として、アクチン細胞骨格制御因子の活性制御に係わるシグナル伝達経路に着目し、研究を進めた。 そのうち、アクチンanti-cappingタンパク質のEna/VASP結合蛋白質であるLamellipodinはR-Rasと結合し、軸索先頂部の成長円錐のアクチン動態の制御を行うことで、軸索突起の伸展を担っていることが明らかになった。Lamellipodinはin vivoにおいても、脳梁軸索の伸長を制御していることを明らかにした。 また、in vitro初代培養系において軸索分枝制御に関わる因子として過去に我々が報告した(MBoC 2012., MBoC 2015)afadinに関して、マウス生体内においても同様の軸索分枝制御を担っているのかを検証した。afadinは様々なガイダンス因子の下流でシグナルハブとして働く低分子量G蛋白質R-Rasの結合因子であり、活性型R-Rasの結合によって細胞膜移行されることで、アクチン細胞骨格のリモデリングを引き起こす。今回、胎生15.5のマウス胎仔に対して、in utero electroporation法を用い、体性感覚野から投射される軸索の形態を生後9日目で観察したところ、軸索分枝に抑制的に働く短いスプライスバリアントのs-afadinの過剰発現や、アクチン結合ドメインを欠いたl-afadinの過剰発現に於いて、軸索分枝の抑制のフェノタイプが観察された。この結果から、afadinは生体内において、軸索分枝の制御因子として機能していることが明らかとなった。
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