EGF(上皮細胞増殖因子)受容体下流で機能し、リン酸化酵素Erkの制御に関与するアダプタータンパク質GAREMについては、GAREM2特異的に見られるEGF刺激後の顆粒形成機構について詳細に解析した。GAREMは発現部位の異なるGAREM1とGAREM2の2種類の分子種が存在する。広範な臓器で発現するGAREM1は基本的にEGF刺激前後で大きな局在の変化は見られず、細胞膜及びアクチン繊維の豊富な葉状仮足付近に多く局在する。一方、EGF刺激前は細胞質全体に局在するGAREM2は、刺激後に特徴的な顆粒を形成し、刺激前後で大きな局在変化を伴うことがわかった。また、長時間のEGF刺激では顆粒が肥大化し、凝集することも見出した。GAREM2が特異的に発現する脳ではいくつかのタンパク質の凝集がアルツハイマー病やハンチントン病などの神経変性疾患に関与していることから、GAREM2の細胞増殖因子刺激依存的な凝集形成のメカニズムに興味を抱いた。GAREM1と2は上記の共通の機能を持つために、Grb2結合部位であるプロリンリッチ領域やチロシンリン酸化部位など、多くの共通構造を持つので、全体的にはアミノ酸レベルで約62%の相同性を有する。そこで、GAREM1とGAREM2のキメラタンパク質を遺伝子工学的にGFP融合タンパク質として発現させ、それらの局在を調べ、GAREM2特異的局在に必要な領域を検索した。その結果、比較的アミノ末端(全長874アミノ酸の170-210番目付近)に存在するグリシンに富む領域がGAREM2の顆粒形成に必要であることがわかった。また、その部分は、GAREM2の機能に必須であるチロシンリン酸化にも影響があることも見出した。 本研究結果はCell. Mol. Biol. lett.誌に掲載された。
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