研究課題/領域番号 |
17K07343
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
多胡 憲治 自治医科大学, 医学部, 講師 (20306111)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 発がんシグナル / 低分子量G蛋白質 / 遺伝子発現 / 蛋白質リン酸化 |
研究実績の概要 |
これまで、低分子量Gタンパク質Rasが誘導する細胞増殖シグナル、発がんシグナルにおいて、NKiRasが関与することを見出し、その分子機構について解析を行って来た。特に相互作用分子としてTRB3、DDB1、NONO、SFPQが同定された。このうち、特にTRB3は新規のがん抑制遺伝子産物として機能し、一方でDDB1は形質転換に対して促進的に機能することも明らかになっている。2018年度は、がん化型Ras変異体が誘導する各種シグナル伝達系に着目し、NKiRasの関与について検討した。NKiRasのノックダウンはRas (G12V)による細胞形質転換を抑制するが、ERKおよびJNKなどのシグナルには影響を及ぼさなかった。mTORC1の活性化はNKiRasのノックダウンにより抑制されたが、その分子機構は現在まで明らかになっていない。一方で、NKiRasに依存したRasシグナル標的遺伝子として、細胞の1次繊毛や中心体に局在し、細胞増殖などに深く関与するCEP290、尿素輸送体Slc14A1が見出されている。リポーター遺伝子などを用いた解析を計画しているが、現在まで新規の知見は得られていない。一方で、古典的Rasのシグナル伝達系についても並行して解析を進めた。その結果、新規のがん化型変異体A146TがERK、Aktに依存しない新規の発がんシグナルを活性化している可能性が見出された。またRas (G12V)変異体はNF-kappaBの活性を増強する新しいメカニズムを見出した。大腸がんの病変部にてp65/RelAサブユニットのSer276のリン酸化が亢進して居ることを見出した。このSer276のリン酸化はRasにより活性化されたp38-MSK1/2経路によるものであることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
mTORC1の活性化に寄与するNKiRas依存性シグナルが未だに明らかになっていない。また、NKiRas依存性のRasシグナル標的遺伝子CEP290とSlc14A1のプロモーターの活性化機構についても不明な点が残されて居る。古典的Rasファミリーのシグナル解析を通じて、KRasの下流に新規のシグナル伝達系が存在する可能性が見出された。この解明が現在抱えている問題点の解明の手がかりとなると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
NKiRas依存性のRasシグナルの詳細を明らかにするため、Ras (G12V) に依存して上昇する蛋白質リン酸化のうち、NKiRasのノックダウンにより変化するものを質量分析により明らかにする。TRB3をノックダウンした細胞においても同様の解析を行うことにより、NKiRas周辺のシグナル伝達系を網羅的に解明することにより、問題解決を試みる。
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