研究課題
本研究は、発がんシグナルにおける新規RasファミリーNKiRasの役割の解明を目的として行われてきた。RNA干渉法によるNKiRasのノックダウンは、がん化型Ras (G12V) 変異体による細胞形質転換を強く抑制することから、NKiRasが発がんシグナルに必須の役割を担うことが明らかになっていた。そこで私たちは、RasシグナルにおけるNKiRasの役割の解明を試みた。その結果、Ras (G12V) 変異体が誘導する発がんシグナルは転写因子NF-kappaBの活性化を増強することが明らかになった。さらに、p65/RelAサブユニットのser-276はRasシグナルにより活性化されたMSK1/2によりリン酸化され、NF-kappaBの転写活性化の原因となることが明らかになった。NKiRasはp65/RelAサブユニットのser-276リン酸化を逆に抑制することから、NF-kappaBの活性制御に関しては、RasとNKiRasは異なる影響を及ぼすことが分かった。一方、私たちはRas (G12V) が発現誘導する遺伝子の中で、Slc14A1がNKiRasに依存することを見出した。興味深い事に、以前に私たちが見出したNKiRas 結合タンパク質TRB3の強制発現は、Slc14A1の発現を抑制した。以上の結果から、TRB3はNKiRasの機能を抑制して、がん抑制遺伝子産物として機能することが示された。今後、Slc14A1の発がんシグナルにおける役割の解明が必要である。また私たちは、NKiRas結合タンパク質として、TRB3、DDB1、NONO、SFPQなどのシグナル分子を同定した。特にTRB3は、がん抑制遺伝子産物として機能することが明らかになった。今後、DDB1、NONO、SFPQに関しては、さらに研究する必要がある。
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