本研究は、研究代表者が見出した新規炎症制御因子であるセラストラマイシン結合タンパク質(mTOC)の機能解析を行い、その生理的重要性を明確にするものである。これまでに研究代表者によって得られた実験結果から、mTOCはMTR4・C1Dなどの核エキソソーム関連タンパク質やDNA、RNAと相互作用することが明らかとなっている。mTOCとMTR4との相互作用研究によって明らかとなった、mTOC上のMTR4結合の機能を明らかにする目的で、mTOCをノックダウンさせた培養細胞を作成することを試みた。CRISPR/CAS9のシステムを用いてmTOCを恒常的にノックアウトさせた培養細胞を作成する試みを行ったが、目的とする培養細胞を得ることができなかった。これは、mTOCをノックアウトした状態では細胞の増殖が止まっているためと思われる。そこで、shRNAを安定的に発現する培養細胞を作成することとした。このようにして作成したmTOC低発現細胞を用いてTNF刺激によるIL8発現上昇を調べたところ、既報のとおりHeLa細胞ではIL8の発現抑制が起こっているが、A431細胞ではIL8の発現抑制は起こっていないことがわかった。次にmTOCがHeLa細胞においてTNF刺激によりIL8の転写活性化に関わっているかどうかを調べる目的で、mTOCのChIPアッセイを行ったところ、mTOCはIL8の転写活性化に直接関わっている可能性が低いことが明らかとなった。したがって、mTOCのIL8発現調節は、mTOCによって分解されるRNAの機能によって引き起こされるものと考えられる。
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